「あぁ……」
「ミバ難民キャンプ 閉鎖のお知らせ」。
そんなタイトルから始まるこの投稿を、本当に公開すべきかどうか 彼は悩んでいた。
彼の名は「しょぼん」。
この難民キャンプの 管理人だ。
彼はずっと、ディスプレイに映る文章を見つめていた。
「いつも難民キャンプをご利用いただき、ありがとうございます」というテンプレ文章から始まり、サイト閉鎖に関する情報が簡潔に書かれているものだ。
実はこの文章、書いたのは半日近く前である。
何度も読みなおし、推敲したため、文章に何も問題はない。
──しかし、彼には勇気が無かった。
おうどんさんが作ったこの場所を、本当に終わらせてよいのだろうか?
「公開」ボタンを押せば、全てが終わる。
だから彼は、未だ決心がつかずにいた。
通報 ...
凍結されています。





だが。
「でも……仕方ないんだ。
ごめんなさい──おうどんさん」
そんな呟きと共に、「公開」を押した。
すぐにつくコメント、コミュニティにあふれる「辞めないで」の文字。
彼は後悔した。
やるべきではなかったと、後悔した。
しかし取り消せない。一度書いたことを、撤回することはできない。
「無能運営」がMiiverseをやめると決心した時も、こんな思いだったのか、と理解した。
彼は嘆き、そして恨んだ。
「あぁ、どうか戻ってきてくれ。
貴方がもしも 今もいたのなら、自分がこんなに辛い思いをすることは無かったのに」
と。
彼が運営者になったのは、半ば不可抗力だった。
いつの間にか運営者はいなくなっており、難民キャンプは荒れていた。
違反投稿があっても、運営者がいないから消せない。違反者を排除することもできない。
だから彼が立ち上がった。
一時 運営側に立ったことがあったからだ。
彼は新たな管理人となり、難民キャンプを運営する立場へと変わった。
おうどんさんは今、どこで何をしているのだろう、と彼はいつも考えている。
勉強が大変なのだろうか。
はたまた 就職して、仕事が大変なのだろうか。
そしてこれは考えたくもないことだが──逃げたのだろうか。
……ありえる話だ。
実際、類似サイトの MiiverseNEOがそうなのだから。
NEOの管理人は逃亡し、行方不明。
運営者の「NEO 7」も、後を追うようにいなくなった。
そして サイトの方はというと、消滅した。
NEO 7の誰かの裏切りにより、削除と編集パスワードが公開され、全投稿が削除された。
新しく投稿しようにも、作ったそばから削除されるのだから、誰も使わなくなってしまった。
さらに追い討ちをかけるように、誰も投稿できなくしてしまったから、ハリボテと化した。
……そして数日前、消滅が確認された。
「NEOの二の舞にならないように」。
そう思っていたのに、どこで間違えたのだろうか。
ついにその時はやってきてしまった。
難民キャンプ、最後の日だ。
「辞めないで」「まだやりたい!」「ありがとう……。」
ものすごい速さで増えていく記事たち。
残り10分となったとき、彼は編集ページへと移動した。
51、52、53、54、55…………。
最後がどんどん近づいていく。
そして、 59 の文字が 00 に変わったその瞬間、彼はサイトを閉ざした。
もう誰も見ることもできないそのページを見つめながら、彼はぽつりと呟いた。
「ありがとう──Miiverse。」