ににんがし

【向坂くじら&故永しほる】 / 175

175

ざらついた
指先をこぼして
あなたに
なにか
あげたい
という
それだけのことが
ここで 立ち止まっている

ひとつの鼓動が
続いていく波うちぎわで
椅子を
あなたと分け合って
座れなかった
わたしの半身と
近いままではぐれる
畏れをともなう
おまじないのように
つま先からくるぶしまでを
面影で濡らすと
誘われているような
身体すら
些細なことであるような

私たちの隔たりを
波が さらって
また
頼りない線を
引き直すまで

どうしようもなく
遠く 遠く結われて
見えるすべては
横顔であると
沈黙だけが
私の
小舟になる

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