7章 発達心理学
課題1 「エリクソン」「臨界期」について追加情報を述べる。
既に述べられている基礎的な情報は省略し、鍵と考えられる2点について記述する。
1.エリクソンは、人の発達は様々な方向へ分化し成長するもの(漸成説)であると考え、その上で各機能ごとに分化、成長のタイミングには適切な期間(臨界期)があるとした。
8つある各発達段階の時期はそれぞれ対応する機能の臨界期に合わせて設定されている。
2.更にエリクソンは人の発達を一個体で終わるのものではなく種として、生物、社会的に捉えた。つまり、人の発達には次の世代への継承(生殖性)が含まれるため、バトンを受け継ぐリレーの様に円環を築く事ができると考えた。
これは教科書で円環としての生涯発達でライフサイクルが紹介されている一因であると考えられる。
上記の情報を追記すべき理由
1.発達全体に共通する考えである"漸成説"についての紹介とそれに付随する重要な概念である"臨界期"の簡単な事前解説をするならエリクソンのライフサイクル論と共に追記するのが本教科書内において適切であると考えた。
2.エリクソンのライフサイクル論を「円環としての生涯発達」として捉える上で、教科書の生物学的な円環の例示だけでは不十分であり、実際の発達段階の課題に絡めて具体的に例示すべきだと考えた。
課題1補足:もし具体的に8段階を載せるなら、私はエリクソンの理論がフロイトの心理性的発達理論が元であること、8段階の初め5段階がフロイトの理論に対応している事を示すべきであると考える。なぜなら上記の情報を追記する事は、発達論の1つが拡張されライフサイクル論となった前例を知ることができ、様々な発達観の違いや関係性の理解に貢献するからである。
フロイトの心理性的発達理論については課題2を参照。
課題2 3つのどれにも該当しない発達論として、フロイトの心理性的発達理論を紹介する。
同一人物が提唱した理論に精神分析理論があり、本理論の基礎となる理論である。精神分析理論は人の行動の基盤に無意識、特に性的欲求(リビドー)を想定する。
心理性的発達理論は、リビドー的に発達が5段階に分けられるとし、それに対応して人格形成を説明する理論である。5段階は「口唇期(2歳まで)」「肛門期(2~3歳)」「男根期(3~6歳)」「潜在期(7~12歳)」「性器期(13歳以降)」である。口唇期から男根期では対応する各期間でリビドーが解消されるとされ、それらを通した気付きの有無や執着傾向によって人格形成の方向性の変化を説明している。潜在期はリビドーの働きが抑圧され、社会的規範の学習や知的活動に関心が向けられる。性器期では口唇期から男根期までの部分的欲動が統合される。
またある段階で刺激が不十分であると"固着"を起こし次の段階へ進めない。また過剰であると"退行(防衛機制の一つ)"を起こし、前の段階へ戻ってしまい、その時期特有の行動をとる。これは発達段階の可逆性を示すものであり、確かに発達段階論であることを表すが、向上のみを考える「右肩上がりの発達段階論」の考えとは相反する。
また、この理論で説明されているのは広く捉えられた資料でも青年期までであり、生物の成長、生殖に伴う変化がひと回りする間の様子については示されていない。よって「円環としての生涯発達論」とも言い難い。
だが、喪失による特化の発達観である「脳科学的発達観」は、動作確認をする様に各器官を一つづつ働かせ、全て切り最後に統合し、より良い形にするという点で今回紹介した理論と似た要素が認められる。とはいえ今回の理論での機能は、潜在期などでも完全に喪失されるのではなく、実際には"抑圧"や"注意が向けられない"といった形である。よって、本理論はこの発達観にも属さないと考えられる。
以上の理由より、私はフロイトの心理性的発達理論を3つのどれにも該当しない発達論として紹介した。
出典1:中道圭人・小川翔大(2021)「教育職・心理職のための発達心理学」ナカニシヤ出版
出典2:日本心理学諸学会連合 心理学検定局編(2022)「心理学検定基本キーワード改訂版」実務教育出版
補足と感想 今回挙げられた3つの発達観だが、これが発達として正しい形だ!と言えるものは存在しない。それぞれの発達観は、各発達傾向を説明する上で、分かり易いイメージの"視点"として捉えるべきである。心理学の分野ではキャノン=バード、ジェームズ=ランゲ説などの様に対立する2理論が多々ある。だがそれでも、事例によってどちらもあり得るという結論に至る、または折衷、統合的な理論が登場する場合が多い。そう考えると、今回述べられた発達論の中には、幾つかの発達観の要素を含む統合的な理論があるかもしれないと思い至った。
課題1: なぜエリクソンの理論がライフサイクル論と呼ばれるのかを誰か説明してくれないかなと思っていました。ありがとうございます。「バトンを受け継ぐリレーの様に円環を築く」という表現が、ライフサイクルの形容として非常に適切ではないかと思いました。エリクソンはフロイトの孫弟子です(直接の師匠はフロイトの娘、アンナ・フロイトだったと思います)。彼はフロイト理論を継承しつつ、それを生涯にわたる発達へと拡張し、ライフサイクルの概念と、発達における社会や文化の重要性を発見しました。
課題2: 一つ一つの発達観にどういう点で適合していないかを詳述し、結論を出してくれました。とてもよい考察の進め方だと思います。「円環を描く」以外の点ではエリクソン理論に似ている学説がたくさんありました。フロイト学説もその一つです。これまでの投稿で、この類似性ゆえ「円環としての発達論」に分類した人が多かったです。その分類の何がよくて、何が不適切だっかが、この投稿を読むとよくわかると思います。
どういう側面に焦点を当てるかによって、さまざまな発達観を立てることができます。それを超えたところに、統一的な発達観を見出すこともできるかもしれないですね。
12点差し上げます。