第9章
課題1 自己観についての補足
Kitayama,Ishii,Imada,Takemura,&Ramaswamy(2006)が、北米人の間で優勢な相互独立的文化は、辺境への自発的入植を一つの起源としている主張し、この仮説を検証する実験を行った。彼らは、相互協調的文化圏とみなされる日本国内に位置しつつも、北米と同様に自発的入植の歴史を持つ北海道に注目し、3つの実験を通じて、北海道人が北米人と同様に相互独立的であることを見出した。
出典:竹村幸裕(2008),「自己心理学6 社会心理学へのアプローチ」,p85~86,金子書房
教科書では、西洋と東洋で自己観に相互独立的と相互協調的で差があると述べられていたが、これは世界地方や国の間の比較であり、上記のように国内地域間の比較をすれば、同じ日本でも社会的背景の違いによって西洋と同じような相互独立的な自己観を持つ地域がある。このように、国内にも地域によって自己観に違いがあることを教科書では述べておらず、西洋全体が相互独立的、東洋全体は相互協調的な自己観が優勢であるという誤解が生まれるため、この情報を補足した。
課題2
高校の時、私も含めた文系2人と理系3人で勉強をしていて、数学についてわからないことがあった。メンバーの中では、文系の1人が1番数学が得意で、それを私も知ってはいたが、私は理系の3人に向けて、数学の質問をした。これは外集団均等性効果の事例である。なぜなら外集団均質性効果とは、自分が属する以外の集団に対して、同質性や典型的属性が強調されるという現象である。先の事例の、5人の中で数学が最も得意な文系の1人ではなく、理系の3人に向けて数学の質問したという部分は、私が「理系は文系よりも数学ができる」という画一的な見方をしたために、理系の人に優先して質問をしてしまった。これは、自分が属する以外の集団に対して、典型的属性を強調したという点で、外集団均等性効果の事例といえる。
課題1: その通りだと思います。西洋、東洋という比較はよくなされますが、実際にはそれほど単純なものではありません。またそのような分け方は、どうしてそういう自己観を所有しているのかという疑問に対して、何の説明も与えません。何もないところへ行って、「よーい、ドン」で暮らし始める開拓の経験が、相互独立的自己を生み出すのかもしれませんね。なお「国内にも地域によって自己観に違いがある」ですますと、「西洋・東洋」のようにラベルをつけただけとなります。この情報は教科書の欠点を指摘した点だけでも重要ですが、さらに自己観の形成因を探るヒントを与えてくれることも指摘するとよかったと思います。
課題2: そこだけ見ると、外集団均等性効果の事例の事例なんでけど、どうしてあなたが文系のもう一人に尋ねなかったのかを説明してほしかったです。この括り方によると、あなたとそのもう一人は「文系」という内集団ですね。内集団は外周団と違って均質性効果が生じないとしたら、もう一人の文系の「数学得意」という属性に従った行動をあなたがとってもよかったように思えます。もう一押しで、さらに面白い事例として紹介できましたね。
9点差し上げます。