12章 心の問題へのアプローチ
今回、流れ・読みやすさを重視するため、課題2を一番上に記載している。
課題2 私は面接法が良いと考える。
面接法には、情報の量を確保することが難しいというデメリットが存在する。だが今回の被験者は「この授業に参加しない学生」である。彼らが+印象を持っているとは考えにくく、その講義に関係する研究への参加率も芳しくないと推察できる。そのため、上記のデメリットがあまり問題にならない。また、情報の量を確保できないなら、正確に調べるために質を重視するべきであり、この方針は面接法の質的情報の確保に長ける特徴に極めて適合的である。
また、改善方法を考える上でも、直接対話が出来る点が大きなメリットとなる。改善案についての質問も直接可能であり、実情に沿った有効性のある改善方法を立案しやすい。
質的情報の収集は観察法も秀でている。だが、「授業に参加しない」傾向が判断できるのは授業が数回は経過した後であり、「参加しなくなった」理由を測ることが難しい。仮説の検証のため、他の授業の出席具合などに行動目録法的に用いることもできる。だが、主軸として用いるには得られる情報があまりに限定的である。
面接なら、質問紙法における面接調査はどうか、という意見も考えられる。だが、面接法と殆ど手間が変わらないにも関わらず得られる情報の質が低いため、今回の場合あまり適合的でないと考えられる。質問紙法を用いるとしても、観察法と同じく併用的にすべきであると考える。以上より、私は面接法が良いと結論づけた。
出典:中澤潤・大野木裕明・南博文(編). 心理学マニュアル 観察法 北大路書房
加藤司(2008). 心理学の研究法 実験法・測定法・ 統計法 改訂版 北樹出版
課題1 論理療法 行動療法について情報提供を行う。
論理療法には、論理情動行動療法という発展形が存在し、その治療までの経路をABCDE理論という。内容はA~Cまでは教科書の通りで、D:Dispute『不適応的な「結果(C)」をもたらした「非合理的信念(B)」について「(自己の内で)議論(D)」する』E:Effect (その効果がもたらされる)とされている。このDは教科書p188例のDと(恐らく意図されて)同一であり、例D:aの「外食は予定より100kcal多いだけ」から議論を始めるなら、「外食可能な柔軟性のある予定にすべき」などと結論づけ、外食(A)を「現実的に継続可能な予定立ての一助(E)」として捉えることが出来るようになる。
行動療法は、不適応行動の原因をオペラント条件付けなどによる誤学習だと考える。よって治療においては、誤学習による問題行動を低減し、適切な行動の再学習をすることが目的となる。具体的にはABC分析があり、先行事象→標的行動→結果事象を考える。先の例において、ドカ食いを標的行動とする場合、流れは外食で食べ過ぎた→やけ食い→ダイエットに失敗(?)となる。是正を目指す場合、先行・結果事象のいずれかを変更することで標的行動の変容を目指す。
これらの情報を提供した理由は「役に立つ」という12章と同様の視点での記載をすべきだと考えたからである。
12章のテーマは「心の問題とアプローチ」である。つまり、心理学という学問がどのように支援に活きるか、活かせるかを主軸とした章なのだ。実際、p186の系統学的脱感作法なども、それ自体の説明+有効性の説明がある。つまり、「認知行動療法」の枠組み内での説明であるならば、この2療法の各基本的説明を削ったとしても、それに絡めてそれぞれが認知行動療法において「どう役に立っているか」の視点での記載が有って良いと考えた。
課題3 認知行動療法において、論理療法は指針と直面、行動療法は分析と適応を担っている。
以下に具体的な説明を順に記載する。
「指針」論理療法では、価値観の是正を試みる場合、人はABCDE理論とおおまかに同じ順路を辿るとされている。
つまり、ABCDE理論自体が治療の方向性や患者の寛解度合いを測る指針として機能するのだ。
「分析」まず、事例を論理療法的に考えるためには、何が起きたかを明確にする必要がある。ここで行動療法を用いる。患者と話し合い、目標(是正したい行動)を定め、それを標的行動としたABC分析を行うのだ。
「直面」ABC分析を試みる、または完了した場合、なぜ先行事象から標的行動に移行したのか、当時の心理と直面することとなる。課題1-2のやけ食いの事例なら、「もう続けられないと思ったから」などに当たる。
「適応」最後に、そう思う自分がいる現実への適応がある。これが難しい場合、教科書にあるような系統的脱感作法などの行動療法を用いて、少しずつでも適応していくことを目指す。
現実的な話も記述する。上記は厚生労働省のマニュアルを参考にしたのだが、そちらでは「分析」と「直面」に非常に大きいウエイトが置かれている。カウンセリングを必要とする多くの患者は、上記の流れを遂行できないほどの「出来事」にさらされている。故に、「何が起きたか」を分析するだけで強い負荷を受け、現実逃避的に歪めた回答をする、またはそもそも回答出来ない場合が多い。また、自身の「行動」そのものを受け入れる事が出来たとしても、その行動をした「当時の心理」を受け入れらないケースもある。先ほどのダイエットの事例の場合、実は「もう続けられない」ではなく、「もう続けたくない」と思っていたとしたら。その現実を受け入れることは「もう続けられない」と比にならない厳しさである。このように、実際の治療において、上記の4段階うち、指針~直面は何度も往復することとなる。また、あるタイミングで突然受容出来る事も少なくなく、その場合には段階を飛ばす事もある。
出典:心理学用語の用語集(2024年1月17日閲覧)
(ABC分析:https://psychologist.x0.com/terms/223.html)(ABCDE理論:https://psychologist.x0.com/terms/224.html)
厚生労働省 心の健康 うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf)
日本心理学諸学会連合 心理学検定局編,心理学検定基本キーワード改訂版,2022年,実務教育出版
課題2: 対象者となる学生たちがどういう状況であるか、どういうことら配慮して情報を得ればよいのかが考えられていて、とても説得的だと思います。
課題1: DとEについてはおっしゃる通りです。Dについては図12.3には書かれているのに、本文での解説がないですね。オペラント条件づけについては2章で語られていることもあり、ここでは説明を省略したのかもしれないですね。ABC分析も図2.5およびその周辺の説明が該当しています。なお行動療法にはレスポンデント条件づけを応用したものもあり、一例として系統的脱感作は教科書に載っているのでご注意を。論理療法については図の内容程度は説明しておくこと、行動療法については2章の該当部分を示すことでよいのではないかと思います。
課題3: 「事例を論理療法的に考えるためには、何が起きたかを明確にする必要がある」。そして「ここで行動療法」を用いるのはどうしてですか。論理療法では「信念」を突き止めないといけないはずです。「論理療法」は「行動療法」の間違いですか。「論理療法は指針と直面、行動療法は分析と適応を担っている」のに、どうして直面の時に「ABC分析を試みる」のですか。最初の部分がちょっとよくわからないです。
この書き方だと、二つの両方が役割分担をしていることはわかりますが、どう補い合っているかがわかりにくいです。
ちなみにスキナーの応用行動分析では、論理療法でいう「信念」は「私的出来事」としての「行動」と位置づけられており、応用行動分析の範囲でコントロール可能と想定されています。すなわち論理療法は不要なのです。「認知」という概念も。気になったら、「行動理論への招待」(大修館書店)という本を読んでみてください。
16点差し上げます。