24心理学(3)

23年度「心理学(3)」投稿ページ / 1716

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F23124 2024/01/30 (火) 13:03:57 ec7c8@ac61b

問題1
⒈水平伝播について
 水平伝播を説明するにあたって、まず理解しなければならない言葉が「ミーム」である。ミームとは社会学習によって伝達される情報の単位のことで、進化生物学者のドーキンズが名付けた。しかし情報という言葉は境界線が曖昧なため、情報をもたらす行動、技術、規則などもミームと同一視される。水平伝播とは、このミームが同時代の集団に対して伝達されることだ。子どもが遊具の遊び方を理解することは、水平伝播の事例として挙げられる。公園には、ターザンロープや鉄棒など、初見では使い方の分からないような遊具が様々ある。初めて公園に訪れた子どもたちはそれらの使い方をどのようにして理解しているのだろうか。まず親と一緒に公園に来ていた場合は、親から言葉で教えてもらったり、実際に使うところを見せてもらうことで使い方を理解する。1人で来ていた場合は、他の子どもたちが遊んでいる様子をモデリングし、真似することで使い方を理解する。このように、同時代に生きる人々との間で、言葉やモデリングによって遊具の使い方が伝達されていくのは、水平伝播の事例といえる。そして水平伝播の特筆すべき点は、情報伝達の圧倒的速さである。一般的に人間を含めた動物は、遺伝子の情報が親から子へと垂直に伝播し、ゆっくりと進化していく。だがミームは生殖に関係なく、同時代の個体間で急速に伝達されていく。人間は、ミームによる文化的進化によって絶大なスピードで発展してきた。つまりこのミーム伝達の要となる水平伝播こそが、文化的進化の核といえる。

参考文献
青木健一(2002).「人類文化の伝播の定量的な扱い」『地学雑誌』111巻,pp849-855

2.ネガティビティ・バイアスについて
 ネガティビティバイアスとは、人はポジティブな情報よりもネガティブな情報に引っ張られてしまうことをいう。ジル・クライン(1991)によると、人は投票行動において最終決定をする際、候補者の長所よりも短所を重要視するという。これは、投票者がポジティブ感情よりもネガティブ感情に引っ張られるネガティビティバイアスの事例といえる。人間がネガティビティバイアス傾向になる理由として、顔面表情の認識や感情表出において、右脳の優位性があること挙げられる。人間の脳は感情体験において、右脳と左脳で別の役割がある。左脳がポジティブ感情、右脳がネガティブ感情の感情体験に寄与している。つまり、ネガティブ感情を司る右脳が優位なため、人間はネガティビティバイアスになるのだ。一方で、加齢に伴う感情変化についての研究では、ネガティビティバイアスは誰にでも当てはまるわけではないことを示している。快および不快の表情を示す顔面写真を提示し、fMRIにより扁桃体の活動を測定した実験を幅広い世代を対象に行ったところ、20代の実験参加者よりも、70代の参加者の方が、快の表情に対してより高い活動性が見られた。これは高齢者が若年成人と比較して、ネガティブ感情よりもポジティブ感情を喚起するものに対してより多くの注意を払うことが分かる。つまり、感情体験の量が多い高齢者は単純にネガティブな感情には引っ張られないといえる。

参考文献
日本心理学諸学会連合 心理学検定局編,心理学検定基本キーワード改訂版,2022年,実務教育出版,p.145,148
https://academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/negativity-bias#google_vignette

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