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仏種は縁に従って起ると知しめす
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太郎論:仏種は、ブッダ・ヴァンシャ buddha-vaṃśa の訳です。仏陀の系譜、系統、血統、種族、家族などの意味があります。カースト制度では、バラモンの子はバラモン、クシャトリア(王族)の子はクシャトリア、シュードラ(奴隷)の子はシュードラというように、生まれによって身分(種族)が決まりました。しかし、仏教では、カーストを否定して、生まれでなく、行為によって種族を為すと説いています。善行によって仏に成れるのです。
行為を起さしめるのは縁です。善い縁によって正しい者となり、悪い縁によって正しくない者になります。よって、相手を正しく導きたいのなら、まずは自分が正しくないといけません。仏教では、善い縁となる人を善知識と言います。善知識になることが、法華経においては重視されます。仏陀は、最高の縁を結ぶために、一仏乗を説くのです。
サンスクリット本には、「仏種は縁に従って起ると知しめす」にあたる文はありません。鳩摩羅什が加えた文なのか、鳩摩羅什の使った底本にはあったけど、現在残っているサンスクリット本にないだけなのかは不明です。仏種という言葉は、法華経で三回使われていますが、三回ともに、サンスクリット本には、それに当たる言葉がありません。仏種を仏性のことだと解釈する人もいますが、仏種という言葉はサンスクリットの法華経にはありません。
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dharmā-mukhā koṭi-sahasr'aneke
prakāśayiṣyanti anāgate'dhve/
upadarśayanto imam eka-yānaṃ
vakṣyanti dharmaṃ hi tathāgatatve||101||
sthitikā hi eṣā sada dharma-netrī
prakṛtiś ca dharmāṇa sadā prabhāsvarā/
viditva buddhā dvi-padānam uttamā
prakāśayiṣyanti mam' eka-yānam||102||
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訳)
未来の世において 如来たちは幾千コーティもの
多くの法への入口を説き示されるであろう
如来の本性において この一乗を説き明かしつつ
まさに法について語られるであろう
この真理を見る眼(法眼)は、常に確かに存続していて
あらゆるものごと(諸法)の本性は常に光り輝いている
そのことを知って 両足で歩く者の中で最上であるブッダたちは
私のこの一乗を説き示されるであろう
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植木雅俊の訳を参考にしました。
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仏種は縁に従って起ると知しめす
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