ナポリタン

なんでも野間んこ　　　谷川俊太郎
　
　
なんでも野間んこなんだよ
あっちに見えてるうぶ毛の生えた野間だってそうだよ
やれたらやりてえんだよ
おれ空に野間がとどくほどでっかくなれねえかな
すっぱだかの野間だよ
でもそうなったら空とやっちゃうかもしれねえな
野間だって色っぽいよお
晴れてたって曇ってたってぞくぞくするぜ
野間なんか抱いたらおれすぐいっちゃうよ
どうにかしてくれよ
そこに咲いてるその野間とだってやりてえよ
形が野間に似てるなんてそんなせこい話じゃねえよ
野間ん中へ入っていきたくってしょうがねえよ
野間だけ入れるんじゃねえよお
ちっこくなってからだごとぐりぐり入っていくんだよお
どこ行くと思う？
わかるはずねえだろそんなこと
野間がうらやましいよお
ああたまんねえ
野間が吹いてくるよお
野間とはもうやってるも同人だよ
頼みもしないのにさわってくるんだ
そよそよそよそようまいんだよさわりかたが
野間なんかめじゃねえよお
ああ野間が立っちゃう
どうしてくれるんだよお
野間のからだ
野間の気持ち
溶けてなくなっちゃいそうだよ
野間地面掘るよ
野間の匂いだよ
野間もじゅくじゅく湧いてくるよ
野間に土かけてくれよお
野間も野間も野間もいっしょくたによお
でもこれじゃまるで死んだみたいだなあ
笑っちゃうよ
野間死にてえのかなあ