兄の誕生日を一緒にお祝いができなかった。勇作は項垂れた。
兄は仕方ないでしょう、問題ありませんよ。と言ったが、やはり悲しかったのだろう。少し肩が落ちていたのを勇作は見逃さなかった。
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兄の誕生日を一緒にお祝いができなかった。勇作は項垂れた。
兄は仕方ないでしょう、問題ありませんよ。と言ったが、やはり悲しかったのだろう。少し肩が落ちていたのを勇作は見逃さなかった。
「改めてお祝いさせてください!」眼前にずいっと真剣な表情の美形が迫る。両手も固くホールドされていて逃げるに逃げられないまま、黒い両目を10回しばたたいて兄はほんの僅かにコクコク頷いた。
「あんまり派手にしないでください」視線を逸らしながら、髪をサスサスと撫でる兄は私にくぎを刺すのを忘れなかった。
去年のことを言われているのだとすぐに気付いた。
前回の誕生日は張り切り過ぎて高級レストランを貸し切りし100本の薔薇をプレゼントして兄様に「これだからボンボンはっ!」と怒られてしまった。
毎年豪華になる誕生日。次はフラッシュモブでもやり出しかねないと危惧した俺は、家で過ごしたいと頼んだ。当日帰宅すると中は真っ暗。電気をつけると部屋の真ん中に巨大な箱が鎮座している。「ハッピーバースデー兄様!」箱の中から頭に大きなリボンをつけた勇作が飛び出してきた。「プレゼントは私です!何でもお申し付けください!」ベタすぎるぞ、花沢勇作。そんなツッコミも弟の笑顔の前では無駄な気がして笑ってしまった。