海水を渡る向こう岸
私を迎えるおじいちゃんの笑顔
写真の中でいつも笑っていた
母と祖母から聞く穏やかな「おじいちゃん」と
この小さな島に閉じこもったまま
家族にも会わず死んだ「祖父」の
あわいにいるおじいちゃんが
私の手を引いて境内へ歩き出す
苔むした石段の上
拝殿の静寂に控えめな柏手
何をお願いしたんだい?
新しい生活のことを
この岸にいないあなたのことは
何故か話してはいけない気がした
ねえ、ここからはどこへも行けないの?
石段から見下ろす海は平らに凪いで
空との境まで歩いて行けそうだ
そこに在るはずの対岸はどこまでも見えないけれど
そんなことはないよ、船が来れば……
おじいちゃんの枯れたような指が指し示す
来るはずだった船
来るはずのなかった家族
いまは何者でもない、私
通報 ...