第8章 感情心理学の課題
課題1:「気分一致効果」「状態依存記憶」についての情報を追加する。
記憶は覚える際の状況(符号化文脈)と思い出す際の状況(検索文脈)の一致度によって規定される。このことを符号化特定性原理と呼ぶ。気分状態依存効果(状態依存記憶)は符号化特定性原理で説明できる。また、バウアーらの研究では、催眠を用いて参加者の気分を幸せな気分もしくは悲しい気分に誘導し、物語を読ませた。後日物語の内容を想い出すテストを行った時、参加者は物語のうち誘導された方の感情価を含む部分をより多く再生した。
出典:日本心理学諸学会連合 心理学検定局編(2022)「心理学検定基本キーワード改訂版」実務教育出版
この情報を追加したのは、教科書では状態依存記憶は気分一致効果の下位概念のように書かれているが、状態依存記憶は記憶した内容が持つ感情価に左右されず、符号化時と検索時の状態にのみ影響を受ける点で気分一致効果とは異なる概念であることと、教科書では気分一致効果のうち内容と検索時の感情価の一致にのみ触れられているが、符号化時と内容の感情価が一致している場合にも気分一致効果が成立することを示すことで教科書に不足している説明を補い、より正確な理解を促せると考えたためである。
課題2:私は「快-不快」「覚醒-睡眠」の二次元で評価できない感情として、恥じることを挙げる。快-不快・覚醒-睡眠の二次元で捉えると、不快かつ覚醒と考えられ、怒りや不安と量的差異しかない感情である捉えられることになってしまうが、それらとは質的に異なる感情であることは明らかである。そこで、「相対的評価」という次元を加える。なぜなら、恥は他者との差異を感じた時に生まれる感情だからである。恥は「不快-覚醒-相対的評価低」と捉えられ、対となる感情として挙げられる誇ることは「快-覚醒-相対的評価高」と捉えることができる。
課題1: はい、その通りだと思います。なお、教科書に説明が不足しているというより、教科書の説明が誤解を与えかねないように見えますね。
課題2: 大方よいと思いますが、「質的に異なる感情であることは明らかである」と断言するのでなく、根拠を示してください。また「相対的評価」という言い方をすると、何との関係で相対的なのかがわからないと思います。「自分の中で相対的」ということもありますよね。よって、「他者比較」とした方がよいと思いました。これまでの投稿でも、この次元は提唱されていましたね。
8点差し上げます。