「わあ……」
さながら氷の彫刻に、シロは驚き、しげしげと眺めていた。
やがて、手先の器用な友人に同じ像を作ってもらおうと思いついたが、
湯飲みを持って向かう道の半ばで、もう氷の花は溶けてしまっていた。
それからは、毎日のように氷の像が現れた。
花だけでなく、鶴と亀、観音菩薩、そして、とぐろを巻いた龍――
様々な形に固まっては溶けていった。
不思議に思ったシロは、姉と慕う思兼神ヤエに相談してみた。
「中国の小説に同じ話があるの。ある役人の誕生日に、家で使っている
たらいの中の水が凍って、花や仙人のような形になった。それは日々
現れては千変万化し、たとえ彫刻の名人が作ったとしても、到底及ぶ
ものではなかったそうな。春になると水が凍ることはなくなったが、
間もなく役人は高官に任ぜられ、家もたいそう豊かになったという」
「つまり、おらも将来、立派な龍神に!」
シロは、拳をぎゅっと握って前のめりになった。
「まだ続きがある」
ヤエは人差し指を振った。
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