小説の設定をここで説明しておく。
この小説では、アドバンの過去世が宮本武蔵という設定になっている。
そのことを記憶に留めて引き続き小説の次の文章を良い感じに仕上がて言ってくれ。
夢の中
今日も夜の勤行を終え、床についたアドバンが面白い夢を観ていた。
「ここはどこだ?」
見た事も無い風景、緑の山々が連なり、広がる田園の先に、藁ぶき屋根の子民家が集落として立ち並び、写真で見たことのあるお百姓とおぼしべく人達が農作業にいそしんでいる。
そんな風景に溶けこむように自分も着流しの薄汚い着物を羽織って腰には日本刀をさし、頭の毛を縛り上げ、まるで武者修行の浪人のごとき風貌で立っていた。
「おーい! たけぞう! そんなとこにすっ立ってるんじゃないよ。早くこっちに来い!」
(あいつ誰だ? 誰に話かけてるんだ?)
後ろを振り返っても、周りを見渡しても自分以外に話しけかけてる人物は居ない。どうやらアドバンに向かって話しかけているようだ。
(俺がたけぞう?
たけぞうって誰だ?)
話かけてきた見知らぬ男が近寄ってきた。
「お前だれだ?」
「誰って、お前の幼馴染の又八に決まってんじゃないか!
何おかしな事いってんだ? たけぞう!」
「俺がたけぞう? 誰だよたけぞうって?」
「宮本村の宮本武蔵(たけぞう)だろ、お前自分の名前わすれちゃったのか?」
(宮本たけぞう?)
「さあ、たけぞう、あの先がおめーが臨む対戦相手、柳生が居る柳生の里だ! 行くぞー!」
(俺が、柳生と勝負するのか? しかも今から?)
「ちょっと待て! 俺は剣術の心得など無い! どうしてそんな俺が柳生と勝負するんだ?」
「剣術の心得が無い? ついこの間、あの吉岡清十郎を打ち破ったお前さんが何を言ってんだい?」
「ちょいと剣を抜いてみな」
又八にそう言われて腰の刀を抜いたアドバン、いやたけぞうだったが、握った刀がまるで自分の体の一部分かのような感覚を感じた。
又八が落ちていた木切れをたけぞう目掛けて勢いよく投げつけた。
それをたけぞうは、見事な太刀筋で一刀両断にした。
(解かる・・・刀の扱い方が、振り方が)
アドバンは、来日して空観寺に寝泊まりする中で、吉川英治の小説「宮本武蔵」の和英版を読んでいた。今自分が置かれているシチュエーションがその宮本武蔵である事を悟るのに時間は掛からなかった。
(俺が宮本武蔵?・・・)
「じゃあ、行こう! 柳生の里へ!」