続きもよろしく。
そういって龍二を連れて事務所の客間を出でたところに鬼頭会の会長が幹部連中を引き連れて帰ってきた。
「やあぁ、雄ちゃん今日は何事だい?」
「いや、対した用事じゃない
会長さんの耳に挟む程の用事じゃない
なぁ、健造、太一」
「はい!」
そう言うと、
「せっかく来たのなら、茶でも飲んでいかんか?」
と会長が雄一朗と別れ惜しそうに誘ってくる。
「こいつを送り届けてやらないといけないから、今日はこれで失礼するよ」
そういって雄一朗と龍二の二人は、事務所を後にした。
暴力団に対して目には目をといった考えで、強気で力で抑え込もうとするのがこれまでの警察のやり方だった。しかし、雄一朗は違った。「敵を敵として認識しない」という柳生新陰流の流儀から雄一朗は、彼らと敵対するのではなく、彼らの理解者となって親身に相談に乗ったり、やっかいなトラブル事の仲介に入ったりして彼らとの距離を縮めていった。そんな雄一朗が口癖のように言う言葉がある。
彼が今回、北九州暴力団対策本部の本部長挨拶で言った言葉でもある。
「力で力を抑え込んでも、何も解決には至らない
大事なことは、理解しあう事である
彼らには彼らの生き様があるんだ
それは一般人とは、少し違った価値観だが、なぜ世間様と違った価値観になってしまったかを我々が理解することが大事なんだと私は思う
構成員一人一人の歩んできた人生を理解して始めてああ、だからこういった価値観の中で生きているんだなと理解に至る
この問題は彼らにあるんじゃ無い、我々の問題である
我々が警察官としてどうしたら国民が安心して生活が出来る世の中を築いていけるか、我々の人間としての器が試されているんだと私は思う」
その言葉を先頭に立って身をもって実践しているのが全国暴力団対策本部長、柳生雄一朗という男である。