そんなチャッピーに次の章を任せて大丈夫かと不安をぬぐえないが、取り合えず次の章をチャッピーなりに仕上げてみてくれ。
十界曼荼羅
ある日、アドバンは和尚と一緒にお題目を唱えていた。
「御本尊に何が書かれていると思う?」
和尚がアドバンに言った。アドバンにそれが解るはずもない。
「何が書かれているのですか?」
アドバンは率直に質問した。和尚が答えて言うには、十界がそこには示されていると。しかもその十界は、仏の十界の境涯だという。一念三千の色相の仏の十界の色相が描かれているという。その十界それぞれに十界が含まれていることを十界互具という。十界が互具することで百界となる。
「その十界を法華経の十如是で開くと千になるじゃろ」
勤行の中で、この十如是を三回繰り返して読むのだが、これは、仮諦の「凡夫の空・仮・中」と、空諦の「仏の空・仮・中」と、中諦の「如来の空・仮・中」をおのおのに開いて三千という色相を我が心の一念におさめて一念三千という仏の本門を体現していると和尚は説明した。
「なるほど、そういった意味があったのですね」
ここのところ、和尚の説法を聞いて仏法の理解を深めていたアドバンは、その和尚の説明をすんなり理解するまでに至っていた。
「では和尚、お題目にはどのような意味があるのですか?」
アドバンが言うお題目とは、勤行の後に唱える南無妙法蓮華経のお題目である。
「お題目は、お題目じゃ、お題目以外のなにものでもない」
そう言うと和尚は再び唱題を始めた。質問を煙に巻かれたみたいでふに落ちないまま、アドバンも和尚が唱えるお題目に合わせて唱題を始めた。
そんな日の夜、アドバンは再び夢の世界の中に意識が入っていた。
「十兵衛・・・」
「武蔵・・・」
二人の剣豪が背中合わせで刀を構えて息を切らしている。
「いくぞっ!」
十兵衛の掛け声と共に、二人は一斉に刀を振りかざし、群がる剣客達を次から次へと斬り倒していく。斬っても斬っても剣客は餌に群がってくるアリの群れのように湧いて出てくる。しまいに力つき二人の剣豪は、アリの群れに埋もれて地中へと引きずり込まれていった。
「はぁ!」と目が覚めたアドバンにじいさんのあの声が聞こえてきた。
「刀を振り回せば、いつかは己が刀によって倒される
道を究めたいなら刀は抜くまでもないもの
いかに刀を鞘から抜かずにおくか
その為に我々は死に物狂いで剣を振る」
その夢の話を翌日、アフロに話して聞かせた。
「不思議だな・・・俺も同じ夢を昨夜見た」
アフロが見た夢では自分は柳生十兵衛だったと言う。