法介
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2025/01/12 (日) 09:09:53
次のシーンに続くんだが、よろしく。
「宗章殿!」
力尽きて仰向けに倒れ、天を仰ぐ宗章に、武蔵が駆け寄る。
「宗章殿! 宗章殿!」
気がついたらアドバンは、救急車の中で救命処置を受ける真兵衛の名を叫んでいた。
「真兵衛どの!」
道場で一人鍛錬に励んでいた真兵衛だったが、急に胸に激痛が走り、倒れ込んでいた。たまたま道場にやってきたアドバンがその場に駆け付け、救急車を手配した。心筋梗塞を起こして命の危機にあった真兵衛だったが緊急手術で一命を取り留めた。
「アドバン、お前のおかげでわしは命拾いした。ありがとう」
柳生の里に来る以前の武蔵は、己の名を力を強さを存在をただ誇示したい、俺を見ろ、といわんばかりに剣を振り回していた。しかし、柳生の里で武蔵の心に話しかけてくるあのじいさんは、
「そんなことのために剣はあるのかね?
おぬしの剣は、そんな小さなものなのかね?
我を捨てよ
無心になれ」
と、武蔵を「空」の世界観へと導いた。「空」とは仏の世界観である。
その中に菩薩という境地がある。「我」という自我意識を打ち消した先にある境地である。菩薩の境地では自我意識が無いので自他の分別が生じない。他者の苦しみを我が苦しみと感じ他者を救済していく「慈悲」の精神に満ち溢れた境地、それが「空」における菩薩という境涯である。
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