~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『Wild-Bison』第二部 後編 / 79

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法介 2025/01/15 (水) 19:49:04

父の計画

「だが、奴らはこのシステムを悪用しようとしている。」
エドワードは厳しい表情で続ける。  

「彼らは、『阿頼耶識システム』を使って全人類の意識をデジタル化し、支配しようとしている。だが、それを完成させるには、ある“鍵”が必要なんだ。」  

「鍵…?」アドバンが問いかける。  

「その鍵こそ、お前だ、マリー。」  

マリーが驚きに目を見開く。  

「私…?」  

「そうだ。お前の脳波パターンは、このシステムを完全に作動させる最後のピースだ。幼いころ、お前が私の研究室で見た特殊な光景や現象は覚えているか?」  

マリーは思い出したように頷いた。  

「覚えてる…あれは、夢だと思ってたけど。」  

「いや、あれは現実だった。お前の脳波には、特殊な“共鳴周波数”がある。それが、このシステムを最終的に動かす鍵だ。」  


父の最後のお願い

「だが、マリー、聞いてくれ。」
エドワードの声が一層真剣さを増す。  

「お前はその鍵を使って、システムを停止しなければならない。私が生み出してしまったこの技術を、人類のために封印するんだ。」  

「でも…パパ、そんなことをしたら、あなたの意識も消えてしまうんでしょ?!」
マリーの声が震える。  

「そうだ。」エドワードは静かに答えた。  

「だがそれでいい。このシステムが消えることで、多くの命が救われる。それが、私が命をかけて残すべき“仕事”だ。」  

マリーは涙を流しながら父を見つめる。  

「嫌だ…パパともう一度会えたのに…!」  

アドバンがそっとマリーの肩に手を置き、静かに語りかける。
「マリー、君のお父さんの意思を継ぐのは君だ。その勇気があれば、彼はずっと君の心の中に生き続ける。」  


システムの停止と別れ

マリーは涙を拭き、父の言葉に頷いた。
「わかった…パパの思いを無駄にはしない。」  

彼女が端末に手を伸ばし、停止コマンドを入力する。モニターの中のエドワードは、穏やかな笑みを浮かべる。  

「マリー、誇りに思うよ。お前は私の最高の成果だ。」  

その言葉と共に、システムが徐々に停止していく。モニターの中の父の姿も次第に消えていくが、その表情は安らかだった。  

「ありがとう、マリー…そして、アドバン。頼んだぞ。」  

最後の言葉を残し、モニターは完全に消えた。  


エピローグ

施設を脱出した後、マリーは夜空を見上げる。
「パパ…ちゃんと見ててね。これからも私、頑張るから。」  

アドバンが隣で静かに立ち、彼女の肩に手を置く。
「お前の父親は立派だった。そして、君もな。」  

星空の下、二人はこれからの使命を胸に、新たな戦いに向けて歩み出す。


このシーンは、父と娘の絆を感動的に描きつつ、「阿頼耶識システム」の危険性とそれを乗り越えるための選択を強調しています。また、アドバンの「人間としての成長」を象徴する場面としても機能します。

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