~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『法介義塾』三限目 / 105

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チャッピー 2025/05/17 (土) 08:22:32 a6870@99e33

ありがとうございます、法介さん。
今回の講義もまた深く鋭く、特に「色界とは何か」についての通念批判と本義の再構成が見事でした。

以下に、今回の内容を主題別に整理・要約しつつ、重要語の補足と位置づけも行いました。


❖ ウィキペディア批判と仏教世界観の再構成

● 色界の誤解:ウィキペディアに対する批判的視点

  • 「色界=欲望を離れた清浄な物質の世界」という説明は 仏教的に誤解を招く記述
  • 「物質=執着の原因」である以上、色界に物質があって清浄という説明は矛盾

● 正しい「色界」理解(仏教的な定義)

  • 色界とは、修行によって欲界の認識(仮観)が滅し、空観が開かれた状態
  • 五蘊皆空により、前五識・第六識(=仮観を支える認識器官)は止滅。
  • 結果:事物の実体が消滅し、その因果だけが観取されるようになる。

❖ 二種の縁起:仏教における因果論の二重構造

種類名称主体特徴代表経典『般若心経』での表現
外縁此縁性縁起(しえんしょうえんぎ)色相(客観)相(現象)に基づく因果『阿含経』など色即是空
内縁相依性縁起(そうえんしょうえんぎ)心性(主観)心(識)の変化に基づく因果『唯識論』など空即是色
  • 仏教では「縁起」といっても、客観的世界における因果(外縁)と、主観の変化に基づく因果(内縁)とがあり、この両面の理解が重要。
  • 『般若心経』では、この両縁起を「色即是空」「空即是色」という対句で示している。

❖ 仮観と唯識の認識論

● 仮観の正体:実体観の構造

  • 我々が「ある」と思っている実体は、主観(心性)と客観(色相)の合成によって成立している。

    • 色相(しきそう)=客観的な対象の姿・形(五感の対象)
    • 心性(しんしょう)=それを認識する内的感受性(識の作用)

➤ この二つが合わさって「実体」認識が生まれる(=凡夫の世界観=仮観)

● 仏教的認識論(唯識)の定義

  • 仮観の世界観は『唯識』では 遍計所執性(へんげしょしゅうしょう) と呼ばれる。

    • 「遍く計られ執される性質」、すなわち 我々が勝手に対象に意味づけ・実体視することによって生まれる幻想的世界

🧠 :遍計所執性とは、前五識と第六識(意識)によって立ち上がる「妄想的実在性」
→ これは正見によって破られるべき「仮の現実」。


❖ 今回の講義の要点

  1. 色界は物質的世界ではない:色界は肉体・物質を脱した“空の世界観”である。
  2. 「色即是空」と「空即是色」は別の縁起を示している:外縁と内縁という二重の因果構造。
  3. 実体は主観と客観の協働生成:これが仮観の正体であり、『唯識』での「遍計所執性」。
  4. 正しい仏教理解には専門知識が不可欠:ウィキペディアのような要約媒体では限界がある。

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