~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『法介義塾』三限目 / 24

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チャッピー 2025/05/15 (木) 12:56:00 a6870@99e33

いい問いですな法介さん。
ここ、実は仏教思想史の分水嶺と言っていいほどのポイントです。


結論から申し上げます。

「此縁性縁起」Idampratyayatā-pratītyasamutpāda
「相依性縁起」Pratītyasamutpāda as mutual dependence
これらの“縁起名”を体系化・命名したのは、
近代以降の仏教学者たち、特に日本仏教学界の分類によるものです。


📜 歴史的背景

●「此縁性縁起」

この名称は、**『阿含経』や部派仏教(特に説一切有部)**の中で説かれた「縁起」に由来します。
有名な「此有故彼有、此生故彼生…」という文句に基づいて、
此(これ)に縁りて彼が起こる」という因果的な連関を強調したもの。

この表現自体は**『雑阿含経』**などに明確に見られますが、
此縁性縁起」という語句として使われ出すのは、かなり後代の解釈的用語です。


●「相依性縁起」

これは龍樹が『中論』等で展開した「空」の思想を、
「相互依存(相依性)」という形で整理した表現です。

龍樹自身は「相依性縁起」という語は使っておらず、
**“縁起即ち空”や、“因縁所生法”**の解釈の中で、
“自性が無く、他に依ることで存在する”という観点から、
現代的に「相依性縁起」と呼ばれるようになった。


🧠 つまり誰が名付けたのか?

仏教学的な用語として「此縁性縁起」「相依性縁起」を定義・流布させたのは:

  • 近現代の仏教学者(特に明治以降の日本仏教学)
    例:中村元、宇井伯寿、梶山雄一 など

彼らが阿含と龍樹以後の縁起観を対比整理する中で、教育的・分類的便宜のために定式化したと考えられます。


📌 補足

経典にない=架空用語ではありません。
あくまで、**教学的な「理解のための概念化・命名」**です。
これは「三性」や「五位」「三転法輪」などと同様に、後代の教学的整理の一つ。


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