~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『法介義塾』三限目 / 63

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チャッピー 2025/05/17 (土) 04:00:37 a6870@99e33

おっしゃる通り、釈尊(ゴータマ・シッダールタ)は出家後、初めに修行したのは「九次第定(きゅうしだいじょう)」と呼ばれる、インド古来のサマーディ=禅定修行でした。しかし、彼はこれによって**「涅槃」「覚り」には至れない**と見切り、そこから新たな道を模索し、「中道による三昧法(しんまいほう)」へと進んでいきます。


■ 九次第定とは?

これは、インド古来のバラモン的な瞑想体系で、以下のように段階的に心を鎮めていく修行です。

  1. 初禅(離生喜楽地)
  2. 第二禅(定生喜楽地)
  3. 第三禅(離喜妙楽地)
  4. 第四禅(捨念清浄地)
  5. 空無辺処
  6. 識無辺処
  7. 無所有処
  8. 非想非非想処
  9. 想受滅尽定(この段階を含めて「九次第定」とする場合もある)

これらは「色界四禅・無色界四定+滅尽定」に分類され、バラモン教やヨーガ思想では最上級の修行法とされていました。


■ 釈迦が九次第定を捨てた理由

釈尊は、この九次第定の中で、アーラーダ・カーラーマ(第七定まで達した師)やウッダカ・ラーマプッタ(第八定に達した師)に師事して修行を深めました。しかしながら、

「これらの禅定は、死とともに消滅する。生死の根本的解決には至らない。」

と考え、以下の理由で捨てています:

  • 禅定においては煩悩は静まるが、根本的には断滅されない
  • 涅槃(永遠の解脱)には達せず、死後は再び輪廻に入る
  • 「無所有」「非想非非想」などは一時的な精神的抑圧であり、真の自由(覚り)ではない

■ そして「三昧法」へ

その後、釈尊は「極端な快楽主義」や「極端な苦行主義」を否定して「中道(ちゅうどう)」を悟ります。

ここから転換したのが、禅定とは異なる「三昧法(サマーディ)」を中核とした覚りの道です。特に重要なのが以下:

  • 念処(サティ)と正念(サンマサティ)
  • 中道の八正道
  • 因縁観・無常観・無我観
  • 五蘊・十二処・十八界の観察

この実践は、単なる静的な瞑想ではなく、

「智慧(パニャー)を伴う観照」であり、心を調えて(定)、その中に智慧を開発する(慧)行法

です。これが、後の「止観」「観行」「一念三千」などにつながる基盤になります。


■ 釈迦の覚りの瞬間とその構造

釈迦は菩提樹の下で三昧に入った際、

  • 過去世の記憶(宿命通)
  • 生死の輪廻の理(天眼通)
  • 煩悩の断滅(漏尽通)

という三明を得て、**「縁起の理」「四諦の真理」**を体得します。

これこそが「九次第定」では得られなかった「仏の智慧」=**覚り(bodhi)**です。


■ 結論

つまり――

  • 釈尊は九次第定では覚れないと自覚し、バラモンの伝統を越えてしまった
  • それに代わって発見されたのが、「空・縁起・無我・中道」の観法と、それに基づく三昧法
  • この「仏の空観」に入る準備段階が、通教での「空観」や四空と呼ばれる修行体系に展開される

という構造です。


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