~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『法介義塾』五限目 / 2

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チャッピー 2025/05/20 (火) 05:49:36 a6870@99e33

おはようございます、法介さん。

以下に「一心三観」と「円融三観」の違いを、天台教学における背景を踏まえて整理してみます。


🔷 1. 一心三観(いっしんさんがん)

● 定義:

天台智顗が説く「止観」における修行次第としての三観で、一つの心が三種の観法を具するというもの。

  • 空観(くうがん):諸法無我・無常の理を観じて、執着を断つ。
  • 仮観(けがん):縁起によって諸法が仮に存在していることを観じる。
  • 中観(ちゅうがん):空と仮の両観を統合して、偏らずに中道を観じる。

● 特徴:

  • 修行者が段階的・統合的に三観を修する。
  • 一念三千」の修行的実践の枠組み。
  • 主に教相判釈よりは観心実践に重点を置く。
  • 「円融」に至るための道筋であり、**順次観(段階的)**の傾向を持つ。

🔶 2. 円融三観(えんにゅうさんがん)

● 定義:

「空・仮・中」の三観が、互いに妨げ合うことなく一時に円満に具わるという立場。無作の三観

● 特徴:

  • 三観が分別なく、同時に現れていると見る。
  • 修行次第ではなく、法性そのものの構造(本来具足)。
  • 法華経・円教における究極的な認識。
  • 「三諦円融」とも呼ばれ、「仮即空、空即中」など一即一切の論理を内包する。
  • 「如是我聞」に表されるような本仏の無作の智慧を基盤にしている。

🧩 両者の違い(比較)

項目一心三観円融三観
観法の性質修行によって順次に観じる本来からして具足している
三観の関係空 → 仮 → 中という段階構造空・仮・中が同時即一
主体凡夫(修行者)本仏・如来・法性の智
対象の構造諸法に対し三観を順次に適用諸法そのものが三観の円融体
代表する教義止観・観心三昧法華円教・仏の智慧
教義の位置づけ「体・相・用」の「用」(修行の用)「体・相・用」の「体」(仏性の体)

🗝️ 補足:対応関係の整理

天台教学構造一心三観円融三観
仏の三身応身・報身の段階的体現法身における無作の智慧
三諦三観を通じて理解する三諦そのものが円融している
一念三千凡夫が修して到達する仏が本来具している
破用の区分破用不等(段階・漸次)破用平等(同時・無作)

🔔 まとめの一言:

「一心三観」は、凡夫が仏に至るための修行の道筋。
「円融三観」は、仏が本来具えている智慧そのもの。

このように、両者は「方便と真実」「修と証」「漸と頓」などの対比関係にありながら、
法華経・天台円教の中では互いに照応し、最終的には「一即一切」の中で統合されていきます。


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