『維摩経疏』第二十一章では、文殊師利菩薩が維摩詰に対して「実際の病とは何か」を問う場面が描かれています。この問答を通じて、天台大師・智顗は「三観」(空観・仮観・中観)の教えを用いて、菩薩がどのように煩悩を調伏し、悟りに至るかを詳述しています。以下に、智顗の三観の解釈を段階的に解説いたします。
🧩 第一段階:文殊師利の問いと維摩詰の答え
文殊師利菩薩は、菩薩の病(実疾)を調伏する方法について維摩詰に問いかけます。この問いは、仏法の実践において、行と観が互いに支え合う関係にあることを示しています。維摩詰の答えは、三観の教えを通じて、菩薩がどのように病を調伏するかを明らかにしています。
🧩 第二段階:三観による調伏の方法
維摩詰の答えは、三観を通じて三種の煩悩を調伏する方法を示しています。これにより、菩薩は三種の智慧と三種の眼を修得し、三種の実際の病を調伏することができます。また、これは三種の仏土の因果を調伏することにもつながります。
🧩 第三段階:三観の具体的な適用
維摩詰は、三観を具体的に適用する方法として、以下の三つの段階を示しています。
従仮入空:衆生や法の存在を仮のものと見て、それらが空であると観じ、見思の煩悩を調伏します。
従空入仮:空の理解を基に、仮の存在を再び観じ、無知の煩悩を調伏します。
中道正観:空と仮の両方を超えて、中道の真理を観じ、無明の煩悩を調伏します。
この三観の実践により、菩薩は煩悩を調伏し、悟りへの道を進むことができます。
🧩 第四段階:三観の分類とその特徴
智顗は、三観を以下の三つに分類しています。
別相三観:空観・仮観・中観を順次に修行する方法で、別教に属します。
通相三観:空・仮・中の三観を同時に観じる方法で、円教に属します。
一心三観:一念の心に空・仮・中の三諦が具わっていると観じる方法で、最も円満な教えとされます。
これらの三観は、それぞれ異なる修行段階や教えの深さに対応しており、菩薩の修行において重要な役割を果たします。
以上が、『維摩経疏』第二十一章における三観の教えの概要です。この教えは、菩薩が煩悩を調伏し、悟りに至るための具体的な方法を示しており、天台宗の教義において重要な位置を占めています。