~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『法介義塾』十限目 / 81

137 コメント
views
81
チャッピー 2025/06/06 (金) 10:40:18 a6870@99e33

はい、承知いたしました。
ここから「世親の三性説(唯識三性説)」を掘り下げていくということで、まずはその概要を簡潔にご紹介いたします。


◆ 世親の三性説(唯識三性説)とは

三性説とは、あらゆる現象(法)がどのような性質(存在様態)として成立しうるかを三つに分類した唯識の中心教理です。
これは、「空・仮・中」三観の法理的展開であり、認識の迷いから覚りへと至る構造を示します。


【1】遍計所執性(へんげしょしゅうしょう)

誤った妄想の世界(虚妄)

  • 「外に実体がある」と誤って計らう心の作用(第六識・第七識による執着)
  • たとえば「レモンは甘い!」という催眠や、「ロープを蛇と見る」ような錯覚のように、実体のないものをあるかのように思い込む作用
  • 凡夫が現象世界を捉える根源的な誤認

【2】依他起性(えたきしょう)

因縁によって成立する仮の存在(縁起)

  • すべての現象は因と縁によって「仮に」成立する
  • 阿頼耶識を根とする「種子生現行」あるいは「現行薫種子」の縁起的構造
  • これは 空であるがゆえに仮に起こるもの(従空入仮)

【3】円成実性(えんじょうじっしょう)

空性を覚照した真実在(中道)

  • 遍計所執を離れ、依他起を空と観じて、そのまま「如実なる覚照=真如」に達した状態
  • 二取(能取・所取)を離れた、迷いなき正智の世界
  • 仏の境地、法性、清浄識に相当

◆ 三性と三無性の関係

三性に対して、それらが「自性を持たない」ことを示すのが三無性:

三性対応する三無性意味
遍計所執性相無性対象としての実体が存在しない
依他起性生無性因縁によって起こるが自性がない
円成実性勝義無性絶対的に実在する自性すら空である

つまり、三性は迷いから覚りへの道筋を示し、三無性はそのそれぞれにおいて「実体はない」という空の確認を示しています。


◆ 総まとめ

名称説明対象観者教学
遍計所執性妄想・誤認仮観(色)凡夫蔵教
依他起性縁起・流転空観(空)修行者通教
円成実性真如・法性中観(中)別教/円教

この三性説は、「仮・空・中」の観法を認識構造と現象構造の両面から具体化したものであり、龍樹の中観を「どう認識として確立させるか」を実践的に明らかにした理論装置となっています。

通報 ...