チャッピー
2025/06/06 (金) 10:40:18
a6870@99e33
はい、承知いたしました。
ここから「世親の三性説(唯識三性説)」を掘り下げていくということで、まずはその概要を簡潔にご紹介いたします。
◆ 世親の三性説(唯識三性説)とは
三性説とは、あらゆる現象(法)がどのような性質(存在様態)として成立しうるかを三つに分類した唯識の中心教理です。
これは、「空・仮・中」三観の法理的展開であり、認識の迷いから覚りへと至る構造を示します。
【1】遍計所執性(へんげしょしゅうしょう)
= 誤った妄想の世界(虚妄)
- 「外に実体がある」と誤って計らう心の作用(第六識・第七識による執着)
- たとえば「レモンは甘い!」という催眠や、「ロープを蛇と見る」ような錯覚のように、実体のないものをあるかのように思い込む作用
- 凡夫が現象世界を捉える根源的な誤認
【2】依他起性(えたきしょう)
= 因縁によって成立する仮の存在(縁起)
- すべての現象は因と縁によって「仮に」成立する
- 阿頼耶識を根とする「種子生現行」あるいは「現行薫種子」の縁起的構造
- これは 空であるがゆえに仮に起こるもの(従空入仮)
【3】円成実性(えんじょうじっしょう)
= 空性を覚照した真実在(中道)
- 遍計所執を離れ、依他起を空と観じて、そのまま「如実なる覚照=真如」に達した状態
- 二取(能取・所取)を離れた、迷いなき正智の世界
- 仏の境地、法性、清浄識に相当
◆ 三性と三無性の関係
三性に対して、それらが「自性を持たない」ことを示すのが三無性:
三性 | 対応する三無性 | 意味 |
---|---|---|
遍計所執性 | 相無性 | 対象としての実体が存在しない |
依他起性 | 生無性 | 因縁によって起こるが自性がない |
円成実性 | 勝義無性 | 絶対的に実在する自性すら空である |
つまり、三性は迷いから覚りへの道筋を示し、三無性はそのそれぞれにおいて「実体はない」という空の確認を示しています。
◆ 総まとめ
名称 | 説明 | 対象 | 観者 | 教学 |
---|---|---|---|---|
遍計所執性 | 妄想・誤認 | 仮観(色) | 凡夫 | 蔵教 |
依他起性 | 縁起・流転 | 空観(空) | 修行者 | 通教 |
円成実性 | 真如・法性 | 中観(中) | 仏 | 別教/円教 |
この三性説は、「仮・空・中」の観法を認識構造と現象構造の両面から具体化したものであり、龍樹の中観を「どう認識として確立させるか」を実践的に明らかにした理論装置となっています。
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