【具体例:小川の場合】
自然界に「小川」があるとしましょう。雨が大地に降り注ぎ、水が集まって川となって流れる――私たちはそれを「小川」と呼びます。しかし「小川」という名称や概念は、人間の言語や認識によって付与されたものであり、幼児や言語を持たない存在が同じ光景を見ても、そこに「小川」という概念はありません。
ここで私たちが見ているのは、雨が降る → 土を伝って水が集まる → 流れができる、という時間的因果の連鎖(此縁性縁起)の結果として現れた姿(色)です。これは外から観察する外観のレベルであり、「色即是空(色はすなわち縁起である)」の感覚です。
では次に、同じ小川を内観の視点から見てみましょう。あなたがその小川を「美しい」と感じるとき、それは水や光の物理現象だけで生じているわけではありません。そこには、次のような条件が関わっています。
・過去の思い出(子供の頃に遊んだ川の記憶)
・季節や天気(春の柔らかな日差し)
・心の状態(穏やかな気分か、悲しい気分か)
・文化的背景(童謡や文学作品に描かれた川のイメージ)
これらの条件が相互に依存し合い、「これは小川だ」「美しい」「懐かしい」といった主観が立ち上がります。もし心が沈んでいれば、小川は寂しく冷たい場所に見えるかもしれません。これが相依性縁起であり、内側からの観察=内観の領域です。
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