~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

外観と内観から読み解く般若の智慧 / 40

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法介 2025/08/11 (月) 05:39:16

「不生不滅 不垢不浄 不増不減」を四悉檀で読み解く

(唯識・縁起の視点から)

① 不生不滅 — 第一悉檀「世界悉檀」
・意味:諸法は本来、生まれることも滅することもない。現象は縁によって一時的に現れ、縁が尽きれば形を変えていく。

・縁起との関係:これは此縁性縁起に通じる。あらゆる現象は因と縁の集まりであり、それ自体に固定的な「生」も「滅」もない。

・唯識的説明:外境があって認識が起こるという「色即是空」の領域。事物が「ある」ように見えても、それは縁起の結果に過ぎない。

② 不垢不浄 — 第二悉檀「為人悉檀」
・意味:清らか(浄)と汚れ(垢)という区別は、衆生の心の働きによって立ち上がる相対的なもの。

・縁起との関係:これは相依性縁起に通じる。対象(外観)そのものは垢でも浄でもないが、見る者の内面(内観)の条件によって評価が変わる。

・唯識的説明:第六識の認識に文化的背景・記憶・感情が作用して、「垢」「浄」というラベルが貼られる。これは「空即是色」の領域であり、主観が世界を彩る。

③ 不増不減 — 第三悉檀「対治悉檀」
・意味:法性は増えることも減ることもない。得た/失った、多い/少ないという評価は相対的錯覚にすぎない。

・縁起との関係:増減という二元的評価を破ることで、現象の背後にある法空が明らかになる。

・唯識的説明:第七末那識が抱える根本自我は、常に「私が得る/失う」という増減評価に執着する。この執着を対治する方便が「不増不減」である。法空の智慧によって、末那識の我執が退き、相対評価から自由になる。

総合
この三句は、それぞれ四悉檀の方便と唯識の八識構造を通して読むことで、

客観的縁起(此縁性縁起)=「不生不滅」

主観的縁起(相依性縁起)=「不垢不浄」

自我執滅尽の法空(末那識の対治)=「不増不減」
という三段階の悟りへの道筋を示していると理解できます。

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