~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

天台智顗の『觀無量壽佛經疏』の研究 / 45

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法介 2025/09/07 (日) 09:36:23

現代語訳と解説:流通分

「第二利益、中有二」
経典が説かれたことによる利益には二つある。

  1. 韋提希(いだいけ)夫人が無生忍(むしょうにん)という悟りを開いたこと。
  2. 侍女たちが菩提心(悟りを求める心)を発したこと。

「第三流通、亦二」
経典の教えが後世に伝わる流通分には二つの部分がある。

  1. 王宮で説かれた教えが伝わる「王宮流通」
  2. 仏が祇闍崛山(ぎしゃくっせん)に戻られて説かれた「崛山流通」

「初有四」
王宮流通には四つの部分がある。

  1. 経典の名前を挙げて、それを持つように教える。
  2. この教えを修行すれば利益があることを説き、人々に信じるよう勧める。
  3. 阿難に命じて、この教えを保ち伝えるように付嘱(ふしょく)(託す)する。
  4. 目連(もくれん)らがこの教えを聞いて喜ぶ。

「念佛者、人中分陀利華」
念仏を唱える人は、人間の中で「分陀利華(ふんだりけ)」(最も優れた白い蓮華)である。これは、その身が優れていることを表している。

「観音勢至爲勝友伴勝」
観音菩薩や勢至菩薩が最高の友となる。

「當坐道場」
やがて悟りを開き、「道場」(悟りの場、菩提樹の下)に座ることになる。

「亦名観無量壽佛、亦名滅除業障也」
この経典は「観無量寿仏経」とも呼ばれ、「業障(ごうしょう)を滅する経」とも呼ばれる。

「歡喜者、三義故喜」
仏が説かれた教えを聞いて人々が喜んだのは三つの理由がある。

  1. 教えを説いた仏が清らかである。
  2. 説かれた法が清らかである。
  3. その法によって得られる結果(悟り)が清らかである。

「耆山流通中、初佛歩空還耆闍崛山」
祇闍崛山の流通分では、まず仏が空を歩いて山に戻り、人々が尊敬の念を増すために神通力を現した。

「次阿難及天龍等、聞法歡喜」
次に、阿難や天龍などが法を聞いて喜び、礼拝して去っていった。

全体のまとめ

この部分は、『観無量寿経』の教えが、最も罪深い凡夫(下品下生)でも救われるという、その普遍的な慈悲を明らかにしています。

  • 下品往生の条件:

    • 下品往生の三つの段階(上品・中生・下生)は、いずれも罪深い凡夫が、臨終の際に念仏を唱えることによって救われることが説かれています。
    • 特に下品下生の「十念」は、一瞬の心の力が、一生の罪を消し去るほどの強さを持つことを示しています。これは、「命の最後の瞬間に仏法に出会う」ことの重要性を強調しています。
  • 経典の意義:

    • 経典の最後の「流通分」は、この教えが仏滅後にどのように伝わっていくか、そしてその教えがいかに偉大な力を持つかを説いています。
    • 「人中分陀利華」という言葉は、念仏を唱える衆生が、まるで泥の中から咲く清らかな蓮華のように、凡夫でありながらも最高の存在であることを象徴しています。

この『観無量寿経』の解説は、すべての衆生が、その能力や罪の深さに関係なく、仏の慈悲によって救済されるという、浄土教の核心的な思想を、体系的に示していると言えるでしょう。

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