~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

天台智顗の『觀無量壽佛經疏』の研究 / 52

60 コメント
views
52
法介 2025/09/07 (日) 09:44:53

3. 序分の後半:発起序(教えのきっかけ)

「発起序」とは、経典が説かれるきっかけとなった出来事である。

この経典では、阿闍世(あじゃせ)が父(頻婆娑羅王)を殺し、母(韋提希夫人)を幽閉したという逆罪の事件がきっかけとなる。

なぜこのような悪事をきっかけにするのか。

  • この世が極めて汚れた悪の世であることを人々に知らせ、厭離(えんり)(この世を嫌い離れる心)を起こさせるため。
  • その結果、極楽浄土を慕い、欣求(ごんぐ)(浄土を欣び求める心)を起こさせるため。

4. 発起序の具体的な内容

この部分では、阿闍世が父王を幽閉し、母を殺そうとした一連の事件を詳しく解説している。

  • 父の幽閉:頻婆娑羅王は、幽閉された牢獄で目犍連や富楼那から法を聞き、命を保つ。
  • 母の幽閉:母である韋提希夫人は、阿闍世に殺されそうになるが、家臣の諫言によって命は助けられ、深い宮殿に幽閉される。
  • 韋提希夫人の願い:幽閉された夫人は、悲しみに暮れ、仏に助けを求める。彼女は、この穢れた世を離れ、清らかな浄土に往生したいと願う。

善導大師は、これらの事件を、単なる歴史的な出来事としてではなく、凡夫の罪深さと、仏の慈悲がそこまで届くということを示すための「仏の巧みなはからい」であると解釈している。

5. 序文のまとめ

最後に、この一連の物語が、清らかな世界に往生するための始まり(清浄業処)であることを示し、序文の解説を締めくくっている。

全体の要点

この文章は、『観無量寿経』が単なる物語ではなく、論理的で緻密な構造を持つ仏教経典であることを証明するために書かれています。

善導大師は、経典の題名(釈名)から、その中心的な教え(弁体・明宗)、そして物語の始まり(序分)に至るまで、すべてを仏教の深い思想に照らして解説しています。特に、「なぜ阿闍世の逆罪が物語の始まりなのか」という疑問に答えることで、この経典が「罪深い凡夫を救う」という大きな目的を持っていることを明確に示しているのです。

通報 ...