- 【泥なり会場】交錯影列車
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「はえー。これが電車かあ」
カラッポの人だから、何も知らない。常識というものの範疇に電車がどんなものかというものが入っているとしても、カラッポの自分にとっては、新鮮な風景だった。月面都市 とは違う場所だ。
記憶にある限り、自分は電子情報に分解されて死んだはずだった。なのに生きているというのは不思議な話で、しかも、ここはどうも
死後の世界があるのかを知っているわけではないけれど、今のあの世というものは、こんなふうに魂を運んでいくのだろうか、なんて。
情報に還元されていた存在がそんなことを言うなんて、らしくないだろうか。それとも、逆に魂を情報化した新世代の魔術師(かもしれない人間)としては、ある意味全うな言葉だろうか。
そんな風に思いながら、窓の外の景色が次々と入れ替わるのを見ていたら、隣から人の声が聞こえた。
「もしかして、私みたいな人がいるのかな?」
独り言ちて、立ち上がる。様子を見てみて、もし話の通じそうな相手だったら、ここが何なのかを聞いてみようか。