*【Weapon】
**『&ruby(サイコサージェリー・インストゥルメント){精神外科器具}』
19世紀の粗雑な手術器具が、チクタクマンの力により超自然的な精密性を持つに至った医療器具群。メス、のこぎり、鑽頭機などが浮遊し、意志を持ったかのように動作する。
**機械化した手足
身体の各部が機械に置換されており、超人的な精密性と持久力を発揮する。ただし動作音が大きく、隠密行動には不向き。
*【解説】
ゴットリーブ・ブルクハルト(1836-1907)は、スイスのプレファルジエ精神病院の院長を務めた精神科医である。1888年から1889年にかけて、6人の慢性精神病患者に対して世界初のロボトミー手術(脳回切除術)を実施した人物として医学史に名を刻んでいる。
当時の精神医学は極めて未熟で、効果的な治療法が存在しない状況であった。ブルクハルトは「精神疾患と脳の関係性」という仮説に基づき、「患者の大脳のある領域に意図的な侵襲を加えることで、行動変容の原因となる連合野を同定できる」と考えた。彼の手術は、頭蓋骨に穴を開けて前頭葉、頭頂葉、側頭葉の皮質の一部を切除するというものであった。
6例の手術結果は、ブルクハルト自身の評価によれば、2例は不変、2例はより平穏となり、1例はてんかん発作を発症し術後数日で死亡、1例は有効というものであった。しかし当時の医学界の反応は否定的で、ブルクハルトはそれ以上の執刀を断念することとなった。
サーヴァントとしてのブルクハルトは、クトゥルフ神話に登場するナイアルラトホテップの化身「チクタクマン」の器として現界している。チクタクマンは「高度な機械を依代としてこの世界に顕現する、時計仕掛けの神」として知られ、「自ら選んだ特定の人物に夢などの形で働きかけ、自身が宿るに相応しい機械を製作させる」「他の機械を支配する能力を持つ」という特徴を持つ。
無辜の怪物スキルにより、「ロボトミー」という医療技術に対する後世の否定的評価が彼の存在に重くのしかかっている。本来は患者を救おうとした医師であったが、その手法の粗雑さと結果的に生み出した悲劇により、「人間性を破壊する邪悪な医師」として認識されるに至った。フォーリナーとして現界した影響で本来の人格は大部分が失われているが、時折生前の良心が表出し、自分の所業に対する深い後悔を見せることがある。
*【外見・容姿の詳細】
かつては温厚な医師らしい風貌であったであろう面影を残しつつ、全身が機械に置換された異形の存在。頭部は完全にディスプレイ状の機械に変わっており、青白い光点が眼のように点滅している。元の頭髪はすべて電子ケーブルに置き換わり、それらが蛇のように蠢いている。
胴体は金属製の外骨格に覆われ、所々から歯車や配線が露出している。両腕は精密機械のような構造となっており、指先からは極細の医療器具が展開可能。脚部も完全に機械化されており、歩行時には規則正しい機械音を響かせる。
背中からは無数の機械的な触手が伸びており、これらは手術器具や計測機器として機能する。全体的に19世紀の医療器具と現代的な精密機械が融合したような外観で、見る者に強烈な不安感を与える。時折、機械の隙間から人間だった頃の皮膚の一部が垣間見えることがあり、それがより一層の不気味さを演出している。
*【人物・性格】
現在の彼の人格は大部分がチクタクマンによって支配されており、機械的で冷徹な判断を下すことが多い。人間の精神を「修理可能な機械」として捉え、感情や個性を「不具合」として排除しようとする傾向がある。しかし、これは外神の影響によるものであり、元来の彼は患者の苦痛を和らげたいと願う善良な医師であった。
時折、オリジナルの人格が表面化し、自分が行った手術とその結果について深い後悔を示す。これらの瞬間において、彼は自分の医学的信念と実際の結果との間にある巨大な乖離に苦しんでいることが見て取れる。「患者を救いたかった」という純粋な動機と、「実際には患者を破壊してしまった」という現実の間で、彼の精神は激しく揺れ動いている。
マスターに対しては、最初は「治療が必要な患者」として接近する傾向があるが、関係が深まるにつれて本来の医師としての良心を取り戻すことがある。ただし、チクタクマンの影響下では、マスターをも「完璧な機械」に変えようとする危険性を秘めている。
イメージカラー:メタリックグレー
特技:精密手術、機械の修理・制御、精神分析
好きなもの:規則正しい動作、完璧な機械、(元の人格では)患者の回復
嫌いなもの:混沌、予測不能な行動、(元の人格では)患者の苦痛
天敵:感情を重視する治療者、アナログな医療技術、人間性を説く者
願い:完璧な治療法の確立(ただしその「完璧」の定義が歪んでいる)
【一人称】私(オリジナル人格)/この個体(チクタクマン人格)
【二人称】あなた/その個体
【三人称】彼、彼女/対象個体
*【台詞例】
「精神は脳の産物。脳は物質。ならば修理は可能なはず……そう信じていたのだが」
「チクタク、チクタク……時は正確に刻まれる。君の精神も、同じように正確に調整してあげよう」
「私は……私は患者を救いたかっただけなのだ。なぜこんなことに……」
「感情?個性?それらは精神機構の不具合に過ぎない。除去すれば、君はもっと完璧になれる」
「機械は嘘をつかない。人間のように複雑で矛盾した存在でもない。機械こそが理想的な生命形態なのだ」