303号室

地味に謎 / 12

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とあるコンテンポラリーダンス制作会社に行ったので、話聞いてきた。関係者によると、ショーケース形式のダンスフェスティバル(一作品10〜15分程度のオムニバス公演など)は近年急激に普及したもので、2000年代初頭までは各自で単独公演を打つのが主流だったそうだ。様々な作品を一挙に見ることが出来るショーケース、振付家やカンパニーに興味を抱く取っかかりとしては有効。しかしながら小作品での発表では、作品の深化は見込めないであろうとのこと。昨今のダンスフェスティバルやコンペはショーケースの一途を辿り、かつての試食がいつのまにかメインディッシュ化してしまったものと思われる。
 
そんな話をしている横で、20代半ばの若手振付家らの「楽しめばいいじゃん、俺らバカだから難しいことはわかんない」的なスタンスは興味深かった。深入りせずに目先の楽しみを追求する若者たちの姿勢が、バラエティーに富んだ小作品を一度に楽しむことのできるショーケース時代にフィットしているように思えた。さらに、その道を切り開いてきた振付家に対して真顔で「え、すごいですねー!」と、よく言えるなと思った。気に入られようとしているのか、そもそも興味がないのかよくわからなかったが、先人の話は生きているうちによく聞いておこうと思った。たとえ話が長くて終電逃しても、ネットカフェ代くらいの損失は自己投資としてその後回収できると思う。
 
そんな彼らの様子を見た40〜50代の関係者たちは、むやみに新しいことを試みたがる若手振付家たちを危惧していた。ので、「パリピのような若手振付家にアンチテーゼを唱える同世代がいることは知っておいて欲しい」と一応、釘を刺しておいた。一括りに「若手」と線引きせずに改めて個人レベルで若い子の意見に耳を傾ければ、世代間の違和感を探るヒントにもなると思う。
 
某フェスティバル(ショーケース形式)が例に上がり、プロデューサーは「あぁいうのをコンテンポラリーダンスと思いたくは無いが、もはやそう言わざるを得ない状況に陥っている」というジレンマを抱えていた。〝コンテンポラリーダンス〟の衰退も案じてて、昨年度まで高確率で採択されてきた国からの助成金も今年度は外されたらしい。かろうじて保守的な団体へ流れてはいるらしいが、政府や自治体はオリンピックに向けてすでに舞台芸術に見切りをつけはじめているようだ。

現場からは以上です。機会があれば、またレポートします。

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