概要
給料から何が、どれほど引かれるのか「年収1,200万円」「年収800万円」「年収400万円」の手取りを、シングル・ファミリー別に比較。
給料から引かれるもの
①所得税
年収ー必要経費(i)=所得
所得ー所得控除(ii)=課税所得
課税所得×税率=所得税額
(i)給与所得の場合、給与所得控除が必要経費にあたる。
(ii)所得控除は、社会保険料控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などたくさんある。
令和19年までは、所得税に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が合わせて徴収。
②住民税
住民税は居住地の都道府県と市区町村に対して納付する税。自治体により額が変動。
前年の所得をもとに課税される「所得割」+定額で課税される「均等割」=住民税
③健康保険料
会社員や公務員が加入する公的医療保険。加入者・その家族の病気・ケガに保険給付が行われる。保険料率は加入している健康保険組合により変動。
(標準報酬月額+標準賞与額)×保険料率=健康保険料
④介護保険料
老化が原因で介護が必要になったときに、介護サービスを受けられる制度。40歳~64歳の人が、健康保険料に介護保険料が上乗せされる。
⑤厚生年金保険料
会社員や公務員が加入する公的年金制度。加入することで、国民年金にも加入していることになり、国民年金(基礎年金)とその上乗せである報酬比例部分の年金を受け取れる。
(標準報酬月額+標準賞与額)×保険料率=厚生年金保険料
現在、厚生年金保険料率は18.3%で固定。保険料は会社と折半して負担するため、従業員は9.15%を負担。
⑥雇用保険料
雇用保険は、失業時に受け取れる失業保険の給付や職業訓練のための給付などを行う制度。
給与の支給額×雇用保険料率=雇用保険料
令和6年度の労働者負担の雇用保険料率(一般事業)は0.6%
試算結果
4人家族の試算モデル
・小学生の子ども2人
→16歳未満のため、扶養控除は適用なし。児童手当が支給。
・配偶者
→年収103万円以下のため、年収1,200万円以外は配偶者控除が適用。
年収1,200万円は色々と不遇
・所得金額が1,000万円を超えるため、配偶者控除は適用されない。そのため、単身者と手取りは全く変わらず。
・年収に対する手取りの割合は、その年収が増えるに従って割合が減り、今回の試算では最も低い。
・現状の高校授業料無償化制度では原則対象外(※都道府県ごとに異なる)、JASSOの貸与型の奨学金もほぼ借りられない。
結論として、高所得とされる年収1,200万円の手取りは850万円に満たず、子育てには多くのお金がかかるのに支援はほとんど受けられず、年収1,200万円でも生活が苦しい。
800万と1,200万だと生活水準的には同等になるっぽいな。
1,200万を越えてしまうなら、もっと振り切って1,500万とか2,000万稼げればいいんだろうけど、1,200万を越えてしまわないようにする方がまだ楽か。
でも扶養控除とか児童手当のことは、よく分からんけど、特にその配偶者控除ってのが1,000万を越えたら適用されないってんなら、1,200万どころか1,000万を越えないようにするのが理想なんかな?
まぁ、少なくとも単身で800万以上も稼ぐなんて、俺には縁のない話だけどな。
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試算
年収1,200万円で子どもは2人、それで生活が苦しい家庭として以下のモデルで試算した。
<モデル家族>
夫:年収1,200万円
妻:専業主婦
子:17歳&15歳(ともに私立高校に通う)
・住宅ローンあり
・マイカー所有
・横浜市在住
①教育費
文部科学省「令和5年度子どもの学習費調査」によると、私立高校に通った場合、子ども1人の1年間の学習費総額は約100万円。2人なので200万円。月額にすると約16万円。
②住居費
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」によると、三大都市圏の住宅ローン年間返済額の平均は179万6,000円。これに管理費や修繕積立金を加えて年間200万円とすると、月額にすると約16万円。
③車の維持費
車の維持費は月5万円として、年間60万円。
④その他の生活費
総務省「家計調査 家計収支編2023年」から、年収1,000~1,250万円の4人世帯の消費支出は37万5,000円。そこから住居費、教育費、自動車関係費を引くと約28万2,000円。年間で338万4,000円。
⑤貯蓄
手取りの15%を貯蓄すると、年収1,200万円の手取り額を950万円とすると、月12万円、年間142万5,000円の貯蓄額。
これら①~⑤の合計は940万9,000円。
住んでいる地域や配偶者の収入、子どもの数、年齢などによるが、1人で年収1200万円稼ぐと、手取りはおよそ930~970万円。夫婦で1200万円(600万円×2)稼ぐと、手取りおよそ960~1,000万円。
手取り950万円の場合を考えると、年間収支はたったの9万1,000円。支出額としては常識の範囲内であるにもかかわらずこの残額では、「年収1,200万円でも子ども2人を育てると余裕がない」は決して嘘ではない。
これでは3人目の子育てはより厳しい。一応、3人目は保育料の無料や多子世帯に該当による大学無償化の対象だが、養育費と教育費が嵩むため、やはり苦しい。これだけの年収でも経済的な理由で3人目を諦めることはあり得てしまう。
年収1,200万円では支援が受けられない制度がある
①幼児教育無償化
0~2歳の子どもの保育料は、住民税課税世帯は所得が上がるに従って高くなる。保育料は市区町村ごとに決められ、自治体によって異なる。
横浜市の場合、第1子は月額7万7,500円、第2子は月額4万2,600円、第3子以降は無料。
東京都は現在、0歳から2歳までの保育料について、第2子から無料としているが、25年9月から第1子も無料の方針。
②高校の授業料無償化
国の支援とそれに上乗せとなる都道府県の支援がある。国の支援は年収910万円(※)以上の世帯は対象外。
※両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の目安
都道府県の支援は様々。東京都は2024年度から、大阪府は2024年度から段階的に、所得制限を撤廃して完全無償化を行っている。
③大学無償化
大学無償化の対象となる所得基準は低く、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯が対象。年収1,200万円はもとより、平均的な年収の世帯でも対象外。
日本学生支援機構(JASSO)で奨学金を借りたい場合、年収1200万円は有利子の貸与型の奨学金もほぼ対象外(子どもの数と年齢によっては借りられる場合あり)。
年収1,200万円以上の家庭に限った話ではないけど、やはり高校も大学も国公立に限るな。もちろん進学先によっては必ずしもナシとなるわけではないけど、少なくとも高校は進学校に拘るエリートか、あるいは公立にすら受からないかない底辺でない限り、基本的には公立が前提になるだろう。
問題は高校卒業後の進路だ。来るべき就活のことを考えるならば、私立であっても選択肢に入れる家庭は少なくないはず。それが奨学金制度を使えないとなれば、家計が苦しいどころか志望校の進学を諦めざるを得なくなる。奨学金制度はJASSO以外にも色々とありはするが、だからと言って何とかなるという希望的観測は危ないな。