「Vtuberという存在がAIに取って代わられる日は来ると思うか」
「どういうことだ?ボックス」
「私が前、Vtuberという存在について話をしただろ」
「それがどうしたってAIに繋がるんだ」
「あれは見た目は全てデジタルで作られているだろ」
「そうだな」
「だから、AIで再現するにはしっかり中身の筋肉を再現する必要のある実写のアイドルや配信者と違ってAIの言語モデルとの3Dモデルあとは簡単な表情モデルだけで再現できるのではと思うんだ」
「まあ、私の知る限りでも、欧州やアジアでもそのようなプロジェクトが成功を収めていたし、君の言葉が現実になりつつあるな」
「では、今ようやく技術的に実現し社会的に受け入れてもらえる事ができるようになったVtuberという存在はすぐにでも消えてしまうのだろうか」
「私にはわからん。私はアイドルとか詳しくないが、人間には人間の良さがあるのではないか」
「もちろんそうだ。しかし、配信者はリスナーとの一対一の対話はできない」
「AIならそれができると言いたいんだな」
「そのとおりだ。そうしたら、一対一の会話ができるAIに人間のVtuberは勝てないのではないだろうか、という話だ」
「しかし、アイドルには物語というものも重要じゃないのか」
「もちろんそうだ。しかし、身近にあるAIという存在には勝てないのではと思うんだ。オルドーニェス、君は本当はどう思っているんだ」
「ボックス、それほど難しい話じゃない。民衆に求められるものが残る。ただそれだけだ」
「では消える可能性は」
「半世紀後には産業としては消えてる可能性も充分高いだろう」
「君は良いのかそんな世の中で」
「良いでもなんでもない。私はそのような考えを持ってはいけないのだ」
「しかし、一人一人が必死に努力して作り上げた一輪の花のような新しい文化を産業革命の暴力で踏み躙って良いものか」
「君は手作業で作ったハンカチと機械が作ったハンカチの見分けがつくのか」
「つかない」
「そういう事だ。受ける人は誰が作ったかをそれほど気にしない。それが現実だ」
「しかし、君がさっき言ったように物語の重要性もあるじゃないか。AIには無いものだろう」
「AIが、使い手、受け手と共に成長する。それだけで充分な物語になるじゃないか」
「君はAIの存在をどこまで許すのかオルドーニェス」
「それは、君は私にAIを人間の仕事から遠ざけろというのか。非合理に従えというのか」
「そうではないが、AIの進歩のさせすぎも良くないのではないか。せっかくの努力の結晶のような新しい文化を踏み潰すような」
「君はさっきVtuberの構造的問題、一対多のの問題を話していただろう。そのような構造的な問題を指摘できるということはそれを改善する、それ以上のものを生み出せる方法があるということだ。それを行わないのは罪だ」
「それは君の勝手な倫理観じゃないか」
「ボックス、君の黒い噂は聞かないようにしてるんだ。それは君を買っているからだ。それでも私のやり方に介入してきた日には話は変わるぞ。一企業の一部門の都合を私に持ってくるんじゃない」
「わかった。やめた。君を私が動かそうとしたのがバカだった」
「次はタレイラントでも連れてきて私を説得するのか」
「その根回しはもうしたよ。失敗した。その気はないと言われたよ」
「あいつはAIに関するビジネスに投資して儲けているからな」
「知らなかったよ、本人から聞いたのか」
「いや、フッチェが教えてくれた」
「なるほど、私が知らないわけだ」
「君もフッチェに聞けば良いのに」
「彼は私の提示した条件じゃピクリとも動かないんだ。諦めたよ」
「そうか、また耳寄りの話があれば私の方から教えてあげよう」
オルドーニェス
ウルグアイ合衆国大統領、自由党党首。高い支持率を持っている。
ジョー・ボックス
自由党幹事長。元IT企業役員で今でも深い関係性であり続けている。
タレイラント
ウルグアイ合衆国外務長官
フッチェ
警察局長兼情報局長