(2) 日蓮の「覚り」
- 「覚り」は、修行者自身が仏の法(南無妙法蓮華経)を信じ、実践することで「覚醒」し、仏性を顕現するプロセスを指します。
- 日蓮の覚りは、『法華経』を基盤に、縁起と中道の教えに基づいています。
日蓮の特徴:
仏と法の関係性:
- 仏(悟りを得た存在)は法(南無妙法蓮華経)を通じて衆生を救済します。
- 衆生が覚るのは、法への信仰と実践(唱題行)を通じてです。
即身成仏:
- 日蓮の覚りは、修行者が特定の境地に到達することを必要とせず、法を信じることで現世で仏性を顕現させます。
- 「覚り」は「個人の体験」ではなく、法を通じた普遍的な救済の実現に重点を置いています。
縁起と因果の重視:
- 日蓮の教えでは、現象世界(縁起の結果)そのものが悟りの舞台であり、そこに仏性を顕現させることが目的です。
- この視点は、大空経や有相唯識的な立場と一致します。
3. 「空」の捉え方の違い
道元と日蓮の「空」の捉え方にも明確な違いがあります。
(1) 道元の「空」
- 存在論的な「空」:
- 道元の「空」は、主客一如や身心脱落という存在論的な悟りに基づきます。
- 禅宗独特の「無分別智」による空観の実感が中心です。
(2) 日蓮の「空」
- 縁起的・中道的な「空」:
- 日蓮の「空」は、縁起と中道に基づき、因果の働きの中で仏性を顕現することを目指します。
- 外界を「仮に存在するもの」として肯定的に捉え、現象世界に働きかける「実践」を重視します。
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