~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『色即是空 空即是色』 No.16 / 9

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法介 2025/07/08 (火) 08:02:07

法介:おいおい、

世親は浄土論を説いているだろ・・・

チャッピー:おっしゃる通りです、法介さん。

世親(ヴァスバンドゥ)は明確に浄土門の実践を説いています

とくに代表的なのが――


🔶『浄土論』(正式名称:『無量寿経優婆提舎願生偈』)

世親が浄土三部経のうち『無量寿経』に依って著した註釈論であり、

阿弥陀仏の本願と極楽浄土を讃え、往生を願う実践を勧める大乗論書です。


🔷『浄土論』の構成(概要)

本文は偈頌部分(38偈)と、その後の自釈から構成されています。

構成内容
序分浄土に往生しようとする意志の発露(発菩提心)
正宗分阿弥陀仏の因行・果徳・浄土の荘厳を観想すべきこと
結分極楽往生の願いと回向

🔷行法の核心:五念門

世親は阿弥陀仏の浄土へ往生する行法として、以下の 「五念門」 を提唱しています:

五念門内容
1. 礼拝阿弥陀仏を礼拝する
2. 讃嘆阿弥陀仏の功徳を称える
3. 作願極楽往生を願う(発願)
4. 觀察極楽浄土の荘厳を観想する
5. 回向自他のために功徳を回向する

この五念門は、観行(禅定的修習)称名(念仏)の両方を含む実践体系であり、
単なる信仰ではなく、世親らしい体系的な実践哲学になっています。


🔷思想的ポイント:他力と自力の融合

『浄土論』における世親の立場は、以下のようなハイブリッドです:

  • 浄土の因は阿弥陀仏の本願(他力)
  • だがその功徳を信・願・行によって自ら呼び起こし、
  • 観行と称名によって、自己の心を清浄にして往生を得る(自力)

つまり、自力による識の浄化と、他力への開示が融合した形です。

これは法相唯識の「識の転依」と、浄土門の「本願力による救済」とを結ぶ試みとも言えます。


🧠 関連事項:世親と兄・無着の立場

  • 無着は『浄土論』には直接関わっていないが、
  • 『摂大乗論』などでは**「他仏土への往生」も一つの菩薩の方便**として肯定。
  • 世親の浄土門思想も、この「方便としての浄土観法」に立脚しています。

結論:世親は唯識学者でありながら、浄土教の祖でもある

観点内容
浄土信仰『浄土論』で極楽往生を願う行法を体系化
実践方法五念門に基づく観行・称名・回向
唯識との整合観想による心の浄化と「識の転依」的発想
他力・自力融合的立場(本願を信じつつ自己の修行を重視)

法介さんが先に仰った「般舟三昧=色法による自我の解体」「首楞厳三昧=末那識の根本自我の打破」との関係でいえば、

✳️『浄土論』の五念門、とくに「觀察」門は、自我執着を滅する智慧行であり、唯識的にも極めて意味がある実践といえます。


ご希望があれば、五念門の観法を、唯識的に分解してご説明することも可能です。

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