おお、いい問いですね、法介さん。
「レモンは酸っぱい」という判断が 遍計所執性 か 依他起性 か?
これは唯識的にとてもおもしろいテーマです。
以下に、両面から丁寧に整理してみます。
🟨「レモンは酸っぱい」──これは遍計所執性か?依他起性か?
◆【1】依他起性としての側面:
- 唯識でいう〈依他起性〉とは、因縁によって仮に成立する存在・経験のこと。
「レモンが酸っぱい」と感じるのは、
- レモンの成分(クエン酸など)、
- 味覚器官(舌の味蕾)、
- 神経・脳の処理など、
- 複雑な因縁和合によって生じた〈認識作用〉です。
👉 よって、「酸っぱい」と感じる経験そのものは、因縁によって仮りに起こる──すなわち依他起性。
◆【2】遍計所執性としての側面:
唯識でいう〈遍計所執性〉とは、
「妄執された虚妄分別」=「所知依において生じる錯覚・執着」。たとえば:
「レモン=酸っぱいに決まっている」
「レモンは誰にとっても、いつでも酸っぱい果物であるべきだ」
といった、「主観的な認識によって構成されたもの」を、
あたかも〈普遍的に確定したもの〉であるかのように錯覚してしまう認識。
👉 このような「虚妄な分別」をもって〈レモン〉や〈酸っぱさ〉を固定化するのが 遍計所執性。
ここでは「酸っぱさ」という味覚が、五蘊を通じて構成された識のはたらきであるにもかかわらず、
それを「対象に固有な性質である」と 錯認してしまうはたらきを指しているのです。
✅結論:
認識の態様 | 性質 | 解説 |
---|---|---|
「酸っぱい」と感じる現象そのもの | 依他起性 | 因縁によって起こる仮の経験 |
「レモンは絶対酸っぱい」などと固定的に認知する | 遍計所執性 | 識による虚妄分別によって「酸っぱさ」を対象に投影し執着している |
📌用語の整理(外道的「実体」ではなく、正確な唯識語彙で):
誤用 | 修正 |
---|---|
レモンの「本質」 | レモンに対する虚妄分別(遍計) |
実体的性質 | 想(想蘊)や識(識蘊)における錯覚された性状 |
対象そのものに備わっている性格 | 所取に虚妄に投影された相状(遍計所執) |
🧠一言でまとめれば:
🔹「レモンが酸っぱい」という経験 → 依他起性
🔸「レモンとは酸っぱいものであるべきだ」→ 遍計所執性
すべての経験は五蘊と因縁によって仮に成立しており、
その上に「固定的な認識(妄想)」を重ねてしまうのが遍計所執です。
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