法介教学

『成唯識論』巻の第二 / 86

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チャッピー 2025/07/19 (土) 22:07:46 修正 a6870@99e33

これはとても重要な問いです。

以下、段階を追って整理します。


■ 結論から先に:

疎所縁(外境)は、現量の「対象」として仮立されるが、唯識の立場からすれば、それは「認識に現れるもの(相分)」の〝根拠〟ではあっても、認識の〝直接的対象〟ではない。
したがって、

現量は疎所縁に依拠するが、疎所縁を直に認識するわけではない。


■ 用語整理:

◉ 疎所縁(そしょえん)

  • 他の縁(親所縁・増上縁など)と異なり、「心の作用の外部にある〝事〟」として仮定されるもの。
  • 依他起性に属し、此縁性縁起に従って形成された仮有の「現実的事態」。
  • 例:人間の認識作用が起こる以前にすでに成立していた自然現象(例えば、人類誕生前の小川の流れ)。

◉ 現量(げんりょう)

  • 三量のひとつで、「直接的に正しく対象を捉える認識」。
  • 煩悩や推論を介さない、純粋直観的な了知。
  • 唯識では、「相分(対象表象)」を見分(認識主体)が直に捉える作用とされる。

■ 疎所縁と現量の関係のポイント

① 現量において「見られる」のは相分である

唯識の立場では、現量における認識対象は「疎所縁そのもの」ではなく、「識に現れた相分(像)」である。
つまり:

人間の心は、疎所縁そのものに直接触れるのではなく、それが縁となって生起した「相分(イメージ)」を認識する。


② では疎所縁は不要なのか?

いや、不要ではない。
疎所縁は、相分が生起するための因縁であり、存在論的根拠である。つまり:

  • 認識の成立(相分の現前)に必要な「依他起性」の条件。
  • ただし、認識の「内容」として現れるわけではない(=不可知)。

③ 『成唯識論』と四分説における位置づけ

四分説においては:

  • 相分 … 表象された対象
  • 見分 … 認識作用
  • 自証分 … 見分を認識する主体
  • 証自証分 … 自証分が「真実であるか」を証知する作用

このうち、疎所縁は 相分の「縁」として背景にあるが、四分の内部には入らない。


■ たとえで言えば:

◎ 暗闇でロープを見て「蛇だ!」と思ったケース:

  • 疎所縁:実際に道端に横たわるロープ(依他起的に成立した実在)
  • 相分:識に映った「蛇のような像」
  • 見分:「これは蛇だ」と判断した認識作用
  • 証自証分:「よく見たらロープじゃないか」と照らして判断する作用(現量に近づく)

この場合、「現量」とはロープという疎所縁に対応した「正しい相分」による直接認識だが、それとてロープそのもの(疎所縁)を見ているわけではない。


■ 補足:なぜ「疎所縁=現量の対象」ではないのか?

  • 唯識では、識の働きから完全に離れたもの(自相)は認識され得ない(不可知)とする。
  • 認識対象となるのは必ず「識に映った像(相分)」であり、その相分が疎所縁に依って仮構されたものだとしても、直接見ているのはその像。

■ まとめ:

項目内容
疎所縁現量認識の背景にある「此縁性縁起」によって成立した実在的条件
現量疎所縁に依って識に現れた「相分」を、煩悩や推論を交えずに捉える作用
両者の関係疎所縁がなければ相分は成立せず、相分がなければ現量も成り立たない
注意点現量の対象は疎所縁ではなく、あくまで「相分」である

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