【考察のキッカケ】
特に「第何話から!」ということはなく、作中年表/登場人物の年齢表の作成、好物/死因/物品の移動の比較、名前の由来/モデルとなった人物などを調べて遊んでいるうちに自然と、でしょうか。
〔強いて言うなら、183話「狼に追いつく」ですかね。 : ---
刺青人皮は、ウイルクが娘に託した暗号なのだから、文化に関することがヒントになっていて、それは作品でもすでに触れられている可能性が高い、と思っていました。例えば「アイヌは文字を持たない文明→文字は解読者を惑わすためのミスディレクション」のように、「獣の皮を剥いで服にする」「アイヌには刺青の風習がある」といった文化が解読に関係してくるのではないかな、と漠然と思っています。
183話はウイルクのアイヌ名がアイヌ語で「オオカミに追いつく」という意味であり、
「ホロケウオ(シ)コニ」であり、それを思い出したアシㇼパが何かに気づく…というお話でした。
116話「青い目」では、インカㇻマッがウイルクは「ポーランド人の父と樺太アイヌの母から生まれた」と言っています。
こういった情報から、名前の由来/モデルとなった人物を探し始めました。
ウイルク(Wilk)はポーランド語で「オオカミ」を意味します。彼が長谷川写真館で使っていた偽名はグリゴリー(Gregoryか)。原意は『見張るもの』(旧約聖書偽伝・外伝に出てくる堕天使の集団『グリゴリ』の名の意味と同義)らしいです。堕天使! ウイルクにぴったりですね。
また、民族学者の鳥居龍蔵が明治32年(1899年)に千島アイヌの調査を行った際、「千島アイヌ人の通訳グレゴリー氏を雇い入れ」たとあります。 ひょっとしてここから取られた可能性もあるのかなと想像が膨らみます。
民俗学フィールドワークの先駆者 鳥居龍蔵とその世界
また、ポーランドのアイヌ研究者は、ブロニスワフ・ピウスツキ(Bronisław Piotr Piłsudski, 1866-1918)がいます。「1887 年、ロシア皇帝暗殺未遂事件に連座してサハリン島へ流刑となり、 爾来 19 年間、ロシア領極東で過ごすことを強いられた 」という人物で、アイヌ、ニヴフ(ギリヤーク)、ウイルタ(オロッコ)、 ウリチ(オルチャ)、ナーナイ(ゴリド)の言語・民族研究を行いました。アイヌ女性と結婚し、子どもを設けています。
183話に出てきたウイルクのお父さんの顔が肖像画に似ているので、モデルではないかと思われます。
「ポーランドのアイヌ研究者 ピウスツキの仕事 : 白老における記念碑の序幕に寄せて」研究会報告集(2013)
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こんなふうにして興味の赴くままに調べ物や考察をしています。