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官兵衛の「天下は殿のものになりますぞ」みたいな発言は秀逸であると同時に、だから秀吉が官兵衛を恐れるようになったんだよなあ。
秀吉黒幕説は私も支持できない。あそこで毛利との和睦が成立しなかったら、あるいは成立しても破約して吉川元春あたりが追撃してきたらと考えると危険すぎる。畿内で思いのほか光秀に味方する勢力が増える可能性もあるし、丹羽長秀がどう動くか分からないし。
昔、私は信長と秀吉と家康を主人公にした小説をブログに連載したことがあった。ブログネタなので史実無視の部分が大きかったけど、史実無視でも本能寺の変の裏側をどう設定するかは楽しくてかつ悩みどころでもあった。それで描いた内容が、
・常識破りのうえ、天皇の位まで口を出すようになった信長を朝廷が恐れるようになる。
・朝廷はそんな信長との対立を避けるため、征夷大将軍、関白、太政大臣から好きなのを選べと伝える(征夷大将軍を選ぶと予測)。
・ところが信長は琵琶湖に舟を浮かべた上で、提案した近衛前久に3つ全てを辞退、当主は信忠だから信忠なら受けると回答。信長自身は「役職に縛られずに自由に動きたいから」だったが、朝廷は信長が「その上」を望むからだと誤解。足利義満が上皇を狙った前例を考え、信長に朝廷乗っ取りの意図ありと思い込む。
・そのころ、備中高松城を包囲中の秀吉が信長に援軍を頼む。秀吉の意図は、「自分だけでも毛利と戦えるが、毛利両川を含めた総力と戦って負けたら罪に問われる。たとえ勝っても手柄が大きくなりすぎて信長が自分を持て余すようになり身に危険が及ぶ。それなら援軍を頼んで信長自身に花を持たせたほうが覚えがめでたくなる」
・信長は家康の歓待役に光秀を任じる。真面目な光秀は綿密に計画して完璧な接待を行うが、完璧であるためサプライズがなく、サプライズ好きの信長は不満。たまたま料理を知らなかった信長が「おのれ、腐った魚を出しやがって」と光秀を足蹴り。その場は家康の取りなしで怒りを収める。
・恥をかかされて怒りがおさまらない光秀のもとに、朝廷と足利義昭の使者が訪れる。朝廷と義昭は光秀に足利姓を与え16代将軍を任せるので信長を討ってほしいと頼む。光秀は信長と朝廷の間で迷い、回答を保留。
・翌日、信長が光秀を呼び、秀吉の援軍を命じる。「秀吉の下で働けという意味か」と怒りを覚えるが、信長は「出雲・石見を与える」と約束。一瞬光秀は喜ぶが、「その代わり丹波と近江坂本を召し上げ」と聞いて愕然。まだ敵地である出雲・石見をもらっても現有の領地を失えば路頭に迷うと怒り、謀叛を決意して朝廷に回答(ときはいま…の歌で暗示)。
・信長としては毛利はすぐに潰せると思っているので、光秀の処遇はただの領地替え。九州攻略を光秀(日向守)と秀吉(筑前守)に任せる準備として、秀吉を山陽、光秀を山陰に配置するだけで、路頭に迷うのは光秀の誤解。
・光秀の出発後、信長は本能寺に滞在。茶会を開き、近衛前久も素知らぬ顔で出席。信長は茶器を楽しみながら、「ところで先のお話、せっかくの帝のご意向なので無碍にお断りするのも失礼。だがわしはそういう堅苦しい役職は好まぬから、いったんわしが征夷大将軍を受けるが、すぐに信忠に譲ることを許してほしい」と願い出る。それを聞いて前久は信長に朝廷乗っ取りの意志がなかったことを知り、帰り道「なぜその返事をもっと早くしてくれなかったのだ。もう遅すぎる」と狼狽。
・このため、本能寺の変のあと朝廷は一転して光秀に冷たくなり日和見する。山崎の戦いで秀吉が勝つとあっさり秀吉の行動を認めて光秀一人の責任にする。それを知った光秀は「そんな馬鹿な」と嘆き、「心しらぬ人は…」の辞世を残す。
…ということで、朝廷黒幕説を中心にしながら、原因は朝廷と光秀の両者が信長を誤解して追いつめられたため、と設定。いやそこに登場するの近衛さんじゃないだろとか光秀と長宗我部の関係が抜けてるとかツッコミもあるだろうけど、申し訳ないが長宗我部には脇役になってもらった。