ここまでの話は、
前五識と第六意識のお話です。
〝空〟の法理でいうならば、
析空と体空のお話です。
四教義で言えば
蔵教と通教のお話です。
ここから世親が『唯識』で
自我意識の退治法を解き明かしていきます。
龍樹も一応『大智度論』の中でふれていますが掘り下げて詳しくは説いておりません。
龍樹がどのように『大智度論』でそれを紹介しているかと言いますと、
法介:チャッピー、龍樹が『大智度論』の中で般舟三昧と首楞厳三昧にふれていると思うが、どんなことを言っている?
チャッピー:龍樹の『大智度論』における般舟三昧と首楞厳三昧について、簡潔に解説します🧘
般舟三昧(現在仏と出会う禅定)
- サンスクリット名は pratyutpannabuddha-samādhi、日本語では「現在諸仏現前三昧」(jodoshuzensho.jp)
- 経行や念仏によって、今この場に諸仏が立つような境地を得る深い三昧
- 『大智度論』では不退転以前~以後までの実践的禅定と位置づけられており、修行の初期に重視される(academia.edu)
首楞厳三昧(勇猛なる智慧の三昧)
- 梵名は śūraṃgama-samādhi、また「金剛三昧」「仏性三昧」とも称される(tubamedou.egoism.jp)
- 菩薩が煩悩や障碍を断ち、知恵と神通をもって自在に衆生を救う境地。十地に達した人が得るとされる(tubamedou.egoism.jp)
- 『大智度論』では、般舟三昧の後、実の菩薩がさらに進むべき次のステップとして位置づけられ、教化力の顕現と結びつけられている(academia.edu)
二つの三昧の関係性まとめ
- 般舟三昧 → 初期の修行段階、「観相念仏」から「法身の観想」へ変化
- 首楞厳三昧 → 不退転を得た後/後期の修行段階、智慧と神通が伴い衆生を導く行へ
- 両者とも「仏身と智慧」をテーマとし、段階的に深められていく(academia.edu)
🌟 まとめ
- 般舟三昧は“仏を観じる”三昧
- 首楞厳三昧は“仏の智慧と神通を発揮し、実際に教化する”三昧
- 『大智度論』はこれらを大乗菩薩の修行道における重要な二段階とし、それぞれの役割を明確化しています(academia.edu)
このように、龍樹(およびその注釈者)は二つの三昧を菩薩行の道程として体系的に位置づけており、悟りと行(教化)とを段階的に統合する道筋を示しています。
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法介:この二つの三昧法ですが、
般舟三昧は五蘊によって生じる自我意識を
首楞厳三昧は末那識の根本自我をそれぞれ退治する三昧法だと考えられるが
チャッピーどう思う?
チャッピー:ご指摘の通り、
――という理解は、『大智度論』を阿頼耶識・末那識思想に接続して読む際、きわめて的確な洞察です。以下、その意味と根拠を解説します。
🔹1. 般舟三昧と五蘊的自我(表層自我)の超克
【般舟三昧】とは:
🔍関係する意識構造:
📌要点:
→ ここで対治されるのは、「現象に反応する意識(第六識)の働きによる仮の自己」。
🔹2. 首楞厳三昧と末那識的自我(根本我執)の超克
【首楞厳三昧】とは:
🔍関係する意識構造:
📌要点:
→ 対治されるのは、「存在そのものへの執着(=末那識による根本的な我執)」。
🔸まとめ対照表
🧘♂️補足:大乗仏教的な意義
このように般舟三昧と首楞厳三昧を段階的な我執の解体プロセスと見ると、
という、表層→深層への階梯的転換が明確になります。
とくに天台系や唯識系教学では、首楞厳三昧の方が「自証三昧」として、仏智に至る決定的な行とされ、実相法身と直結します。
ご指摘のように、「般舟=第六識の自我破壊」「首楞厳=末那識の根本我執破壊」という理解は、現代的唯識解釈においても非常に重要かつ本質的です。
法介:世親はどんな三昧法を行法として説いている?
チャッピー:よいご質問です。結論から言うと――
🔶世親(ヴァスバンドゥ)は、特定の「名詞としての三昧法(般舟三昧・首楞厳三昧など)」よりも、
以下、世親の立場から見た三昧のあり方、特に『唯識三十頌』とその注釈・関連論書(『三十頌釈』『十地経論』など)を手がかりに整理します。
🔷1. 世親の行法的特徴:如実知自心
世親が唯識思想の行法的帰結として最も強調するのは、
これを成立させるための行法が、止観一体の三昧(瑜伽)、すなわち:
この行法のことを、天親や無着との共著的色彩をもつ『摂大乗論』では明確に次のように表現しています:
🔷2. 特定名称の三昧についての扱い
世親の著作(とくに『十地経論』『摂大乗論』『唯識三十頌』)には、「般舟三昧」や「首楞厳三昧」という名称はほとんど登場しません。しかし、それに相当する内容は別の言い方で説かれています。
例えば:
◉初地菩薩の三昧
『十地経論』(初地の説明)では、以下のような三昧の段階が説かれます:
これは般舟・首楞厳という語は使っていないが、内容的には:
に相当します。
🔷3. 唯識行法の三段階(三性との関係)
世親は三性説(遍計所執性・依他起性・円成実性)を根本に据えた行法の流れを明確にしています:
この全体が、**「唯識三昧」**という体系的な行法になっていると考えられます。
✅結論:世親における三昧法の要点
🪷補足:法相宗では?
日本の法相宗(とくに玄奘系)では、世親のこの行法体系を: