~博多めんたい佛教大学~『法介義塾』

『維摩経玄疏』~四門の相~

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『維摩経玄疏』で説かれる有門・空門・有空門・非有非無門のお話。

法介
作成: 2025/08/14 (木) 16:40:09
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法介 2025/08/14 (木) 17:57:34

『維摩経玄疏』の次の漢文を現代語に訳して解りやすく解説してくれ。

T1777.38.0557a24:    一略辨四門相。二正明四門入體。三
T1777
.38.0557a25: 明悉檀起四門教。第一略辨四門相者。門以
T1777.38.0557a26: 能通爲義。佛教所詮正四句法能通行人至
T1777
.38.0557a27: 眞性實相之體。故名爲門。若外人邪因縁無
T1777.38.0557a28: 因縁説四句。因此四句各見四種邪法之理。
T1777
.38.0557a29: 因此生十四難六十二見。起諸結業沈輪生
T1777.38.0557b01: 死。此是邪道四門。今所不述。若佛法四門即
T1777
.38.0557b02: 是正因縁四句法能通行人同入第一義涅槃
T1777.38.0557b03: 也。故大智論云。四門入清涼池。又譬般若如
T1777
.38.0557b04: 大火炎。四邊不可取。又云。般若波羅蜜有四
T1777.38.0557b05: 種相即四門義。仰尋佛法既有四教不同。今
T1777
.38.0557b06: 約教明門各有四別。一三藏四門。二通教四
T1777_.38.0557b07: 門。三別教四門。四圓教四門。

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チャッピー 2025/08/14 (木) 17:58:16 a6870@99e33

はい、ここは智顗が『維摩経玄疏』で「四門の料簡」を説き始める部分ですね。原文を現代語に訳しつつ解説してみます。


原文の要点と現代語訳

T1777_.38.0557a24–b07

一に略して四門の相を弁じ、二に正しく四門より体に入ることを明かし、三に悉檀より四門の教えを起こすことを明かす。
第一に四門の相を略して弁ずるとは──「門」とは能く通ずることを義とする。仏の教えが示そうとするところは、まさに四句法であり、これによって修行者を真性・実相の体へと通じさせる。ゆえに「門」と名づけるのである。
もし外道が邪な因縁・無因縁をもって四句を説けば、この四句それぞれに依って四種の邪理を見出す。その結果、十四の難問・六十二見を生じ、さまざまな煩悩と業を起こして生死流転に沈む。これが邪道の四門であり、今ここでは述べない。
仏法の四門こそが正しい因縁の四句法であり、これによって修行者は共に第一義涅槃へと入ることができる。
それゆえ『大智度論』に「四門より清涼池に入る」と説かれる。また「般若は大火炎のごとし。四辺からは取ることができない」とも譬えられる。さらに「般若波羅蜜には四種の相がある。これがすなわち四門の義である」ともいう。
仏法にはすでに四種の教え(四教)があるゆえ、今は教に約して門を明かすと、各々に四門がある。すなわち、
 一に三蔵教の四門、
 二に通教の四門、
 三に別教の四門、
 四に円教の四門である。


解説

  1. 三つの段階で説明するよ、と予告している

    • (1) まず「四門とは何か」の概要を説明する。
    • (2) 次に「四門を通してどう真理に入るか」を説く。
    • (3) さらに「四悉檀(衆生に応じた教えの四段階)」と四門の関係を説く。
  2. 「門」とは何か
    「門」とは、行者を真理=実相に通じさせる働きをもつ教えの入口。だから「門」と呼ぶ。

  3. 外道の四門と仏法の四門

    • 外道も「四句」を立てて因縁や無因縁を論じるが、それは誤った四門であり、邪見・誤解を生み、生死に沈む。
    • 仏法の四門は「正しい因縁の四句法」であり、修行者を必ず第一義諦=涅槃へ導く。

    →つまり「四門」という枠組みは、外道にも仏法にもあるが、中身が違う。外道の四門は迷いを増すが、仏法の四門は涅槃に導く。

  4. 『大智度論』のたとえ

    • 「四門から清涼池に入る」=四門はどこから入っても真理へ至れる。
    • 「般若は大火のようで、四辺からは取れない」=真理は一面だけから掴めるものではない。
    • 「般若波羅蜜に四種の相がある」=つまり、四門の理論は般若経そのものの中にある。
  5. 四教と四門
    すでに仏法には「四教」(三蔵・通・別・円)という分類があるので、それぞれに応じて四門を立てるべきである。よって、

    • 三蔵四門
    • 通教四門
    • 別教四門
    • 円教四門
      として、合計十六門が展開されることになる。

要するに、ここで智顗は「四門」とは何かを定義し、「外道の四門」との違いを明らかにし、最後に「仏教の四教それぞれに四門がある」という大きな枠組みを提示しているわけです。

👉 このあと「三蔵四門・通教四門・別教四門・円教四門」が順番に説かれていきます。


法介さん、この部分を読み進めるとき、四悉檀と四門の関係を意識するとすごくスッキリ繋がると思うのですが、そのあたり一緒に整理してみますか?

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法介 2025/08/14 (木) 17:58:36

そうだな、整理してみてくれ。

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チャッピー 2025/08/14 (木) 18:00:26 a6870@99e33

よし、では「四悉檀」と「四門」の関係を整理してみましょう。智顗の『維摩経玄疏』は、四門を説くにあたって四悉檀を下敷きにしているので、ここを理解すると全体像がクリアになります。


① 四悉檀とは(衆生に応じた四段階の説法)

仏が説法するときの 四つの配慮・レベル

  1. 世界悉檀
    世間一般に通じる言葉・価値観に合わせる。
    (例:善を勧め悪を戒める)

  2. 各各為人悉檀
    その人に応じた説き方。
    (例:ある人には禅定を勧め、別の人には布施を勧める)

  3. 対治悉檀
    迷いや執着を破るための薬のような説法。
    (例:貪欲な人には無常観を説く)

  4. 第一義悉檀
    最後に真理そのもの(空・中道など)を直説する。


② 四門とは(真理に至る四つの入口)

「四句法(有・無・亦有亦無・非有非無)」を仏法に応用し、行者を真理に導く 四つのゲート(門)
これも段階的で、修行者を次第に第一義へ導く。


③ 両者の関係

  • 四悉檀=衆生側の立場から見た説法の工夫
  • 四門=仏法側の立場から見た真理へ至る入口

つまり、
👉 四悉檀は「どう方便的に説くか」
👉 四門は「どう真理に入らせるか」

両者は表裏一体。


④ 四教に応じた四門

智顗の工夫はさらに一歩進んで、次のように整理します。

  • 三蔵教にも「四門」がある
  • 通教にも「四門」がある
  • 別教にも「四門」がある
  • 円教にも「四門」がある

→ これで合計 16門

こうして、「仏の説法(四悉檀)」と「修行者が入る入口(四門)」が、四教に応じて多重構造になる。


⑤ まとめイメージ

四悉檀(説き方の4段階)
 ↓ (行者を導く工夫)
四門(真理へ入る4つの門)
 ↓ (四教に応じて展開)
三蔵四門・通教四門・別教四門・円教四門

ここまでまとめてみましたが、どうでしょう?
次は実際に「三蔵四門」から入って、それぞれの門を現代語で具体的に整理していきましょう。