ドォォオオオン!
突如鳴り響いた轟音に、かばん、テングコウモリ、そしてホラアナグマの三人は驚いて扉の方へと顔を向けた。
「今の音は……?」
かばんが呟くと、ホラアナグマが怪訝な表情でテングコウモリと目を合わせる。
「もしかしたら、外で何か起こったのかもしれない。」
ホラアナグマが言うと、テングコウモリは真剣な表情を浮かべて席を立った。
「アタイが外を見てくるよ。」
「ボクもついて行きます!」
テングコウモリの言葉に、続けてかばんが声を上げた。
「まぁ、何もないとは思うが、気をつけてくれよ……。」
ホラアナグマがかばんの言葉に戸惑いつつも言うと、かばんはテングコウモリの後をついて行くようにして歩き出した。
ウィーンという音とともに、入ってきた時の大きな扉が開く。
二人が足並みを揃えて建物の外へと向かい、かばんはその光景を見て困ったように呟く。
「これは……。」
【オープニング】
――かばんたちが慌てて外に出る、その数十分前。
ラッキービーストの明かりがない暗闇の中、サーバルたちは壁のヒカリゴケを頼りに、ひんやりとした洞窟の奥へと進んでいた。
「本当にかばんちゃん、どこまで行ったんだろう?」
サーバルが少しだけ不安そうに眉を顰めながら、トーンを落としてそんなひと言を口走った。
「ボスもついて行ってたことだし、道もそんなに危険なのはいないのはわかるけど、まぁ……心配だよねぇ〜。」
先の道を見ながら気怠げにぽつりと呟くフェネックの横で、アライグマがワクワクと胸を躍らせながら楽しそうに身を乗り出した。
「あのかばんさんがこーんなに帰ってこないってことは、きっと奥の方でとんでもないお宝でも見つけてるのかもしれないのだ!」
そんなことを呑気に口走るアライグマの背後から、やや怪訝そうな面持ちで眉をひそめながら、アフリカオオコノハズクが「そんなことを呑気に言っている場合ではないのです。」と少しだけ焦りを露わにする。
「そもそもボスもかばんも、我々が起きる前にここを進んだのです。これほど整備された道が残っている場所なら、何があってもおかしくはないのです。」
アフリカオオコノハズクに続いて、ワシミミズクも羽角をピコピコと揺らしながら、もっともらしく頷く。
「そうなのです。何より、ここはヒトが手を加えた特別なエリアなのです。我々の知らない、未知の危険が潜んでいる可能性は十分に高いのです。」
「な、なのだ!さすがはかせとじょしゅ、物分かりが良いのだ!よーし、かばんさん達を驚かせるためにも、アライさん達が先にお宝を……。」
「あはは、アライさん、話を聞いてた〜?目的が変わっちゃってるよ〜。」
フェネックがクスクスと笑いながら、いつも通りアライグマの頭をポンポンと叩いた。
サーバルも、みんなの賑やかなやり取りを聞いているうちに少しだけ緊張が解けたのか、パッと耳を立てて明るい笑みを浮かべる。
「そうだね!かばんちゃんもボスも、私たちの足音に気づいたらびっくりするかな? 早く追いつこう!」
「突撃なのだーー!」
アライグマが嬉々として先行し、場の空気は次第に緊張が解けていく。
……それからしばらく経ち、一行は先にある一筋の光だけが目立ち続けるその状況にもたついていた。
「うう……ラッキービーストだったらこの辺りを照らせるとはいえ、本当にかばん達はこんなところを通っていったのですか?」
「そうなのです。ヒカリゴケだけでは、少し足元が心もとないのです。」
アフリカオオコノハズクとワシミミズクが少し不満げに羽をすぼめる中、サーバルは耳をぴこぴこと動かしながら前方をじっと見つめた。
「うん……でも、足跡はちゃんと奥に続いているよ。それに、なんだか向こうの方が少し開けてるみたい!」
サーバルの言葉通り、暗い通路を抜けた先には、少し開けた広い空間が広がっていた。
壁のヒカリゴケにぼんやりと照らされていたのは、かつて"ヒト"たちが使っていたと思われるアトラクションの受付カウンターだった。
「な、なのだ! これこそまさに、お宝が隠されている秘密の場所に違いないのだ!」
アライグマが目を輝かせ、古びたカウンターへと真っ先に駆け寄る。
「アライさん、あんまり勝手に触っちゃダメだよ〜?」
「分かっているのだフェネック! アライさんはただ、かばんさん達が残した手がかりがないか調査しているだけなのだ!」
そう言いながらも、アライグマはカウンターの引き出しを片っ端から開けようとしたり、上に乗っかっている古びた機械を珍しそうにつついたりしている。
「ふむ……ここはかつて、ヒトが列を作って何かを待つための場所だったようなのです。」
アフリカオオコノハズクが天井の案内板を見上げながら顎に手を当てると、ワシミミズクも横に並んで頷いた。
「そうなのです。かばんたちも、ここで何かを見つけてさらに奥の建物へと進んだ可能性が高いのです」
「あ、みんな、これ見て!」
カウンターの周辺を調べていたサーバルが、地面を指さしながら声を弾ませた。
ヒカリゴケの微かな光を頼りに足元を覗き込むと、うっすらと積もった埃の上に、いくつかの新しい足跡がはっきりと残されている。
「足跡が残ってるよ! かばんちゃんとボスのだけじゃなくて……ほら、ここにもう一つ、別のフレンズの足跡がある!」
「ふむ……三つ、あるのです。」
「確実にかばん達の後に、誰かがついて行っているのです。この幅と歩幅からして、それほど大型のフレンズではないようですが……。」
ワシミミズクに続き、アフリカオオコノハズクがもっともらしくフンスと胸を張り、首をきょとんと傾げて床を見つめた。
「そうなのです。この奥に住んでいるフレンズでしょうか。どんなフレンズなのか、一度お会いしてみたいのです」
ワシミミズクが羽角をぴこぴこと嬉しそうに動かした。
「な、こなのだ! どんなフレンズが相手でも、アライさん達がすぐにお友達になってみせるのだ! よーし、早く追いつくのだ!」
「あはは、アライさん頼もしいね〜。でも、まずは追いつかないとね〜」
フェネックがクスクスと笑いながら、いつも通りアライグマの頭をポンポンと叩いた。
サーバルも、三人の足跡が迷いなく奥へと続いているのを確認して、パッと耳を立てる。
「うん! 急ごう! この先にある大きな建物の方へ向かってるみたい!」
「突撃なのだーーっ!」
アライグマを先頭に、フレンズたちがカウンターエリアを抜けてさらに奥へと進もうとした、まさにその時だった。
『――ギギ、ギギギ……ッ!!』
建物へと続く暗闇の奥から、不気味な駆動音が低く響き渡った。
フレンズたちの動きがピタリと止まり、一瞬にして辺りの空気が張り詰める。
「わわっ!? なに今の音……!」
サーバルが身構え、フェネックもサッとアライグマの前に出る。
ヒカリゴケの青白い光に照らされて、闇の中からゆらりと浮かび上がったのは、これまでに見たこともないほど歪な形をした、立方体の不気味なセルリアンだった。
「セルリアンなのだ! 先手必勝なのだーーーっ!」
言うが早いか、アライグマが勢いよく地面を蹴って飛び出していく。
「あ、ちょっとアライさん待って!」
「おのれセルリアン! アライさんの一撃を喰らうのだぁぁあ!」
小さな体に似合わない力強い突撃がセルリアンを捉えた。しかし、相手はとても頑丈だったのか、鈍い音を立てて弾き返されてしまう。
「あいたたた……! 硬いのだ!」
「アライさん下がって! ――はぁぁぁあっ!」
すかさずサーバルが追撃に移り、しなやかな跳躍から鋭い爪を繰り出した。
ザシュッ! と激しい音が洞窟内に木霊し、サーバルの爪がセルリアンの急所を綺麗に捉える。
パリン、と小気味いい音を立ててセルリアンは光の粒子となって消滅した。
だがそこで、セルリアンが消滅した際の衝撃の余波が、限界を迎えていた周囲の洞窟の古い岩盤へとダイレクトに伝わっていく。
みしり、みしり、バリバリバリッ!!!
「……ッ!?マズイのです!洞窟の天井が今にも崩れそうなのです!」
アフリカオオコノハズクの焦燥に満ちた叫びと同時に、頭上から容赦なく巨大な岩石が降り注ぎ始めた。
「うわあああ!崩れてくるのだーっ!」
「アライさん、こっちへ!」
フェネックがアライグマの手を引いて必死に駆け出す。
背後では、轟音と共に凄まじい質量の土砂が、アトラクションのカウンターエリアごと通路を完全に圧殺していった。
――ドォォオオオン!!!
逃げ惑うサーバルたちのすぐ後ろで、通路を真っ二つに分断する一際大きな轟音が鳴り響いた。
―――――――――――――――――
の の の の の の の の の
の の の の の の の の
の の の の の の の の の
の の の の の の の の
の の の の の の の の の
―――――――――――――――――