帝国データバンクの雇用動向に関連する調査(「2025年度の雇用動向(採用)」)で、正社員の採用状況について「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と考えている企業は58.8%と6割を切ったことが話題となっています。同調査では新型コロナの影響が大きかった2021年度(55.3%)以来4年ぶりに6割を下回りました。
帝国データバンク記事の数値は全国調査のものです。
地方の静岡(静岡第一テレビ記事)、茨城(茨城新聞クロスアイ記事)でもほぼ同様の傾向が出ています。
ココがポイント
『採用予定がある』(中略)企業は前回調査(2024年2月実施)から2.7ポイント減の58.8%となった。
出典:帝国データバンク 2025/3/25(火)
県内企業330社のうち、今年度、正社員の採用予定がある企業は57パーセントで3年連続で前年を下回りました。
出典:Daiichi-TV(静岡第一テレビ) 2025/4/26(土)
茨城県内企業の意識調査によると(中略)新型コロナウイルス禍の21年度以来、4年ぶりで6割を下回った。
出典:茨城新聞クロスアイ 2025/4/24(木)
エキスパートの補足・見解
企業で人が足りない、人不足の傾向は変わりません。
にもかかわらず、採用予定がコロナ禍以来の6割を下回りました。
背景としては、「大企業との賃金格差により、採用が難しくなっている」「人件費上昇分に見合った収益を確保できない」(茨城新聞クロスアイ記事)、「人手不足などで採用意向はあるものの物価高騰による経営の厳さが影響」(静岡第一テレビ記事)などがあります。
この傾向は東京や大阪などの大都市部だけでなく地方でも同じです。採用難、すなわち採用氷河期は今後も続くとどうなるでしょうか。中小企業を中心に成長が鈍化、あるいは人件費倒産に追い込まれる企業の増加が予想されます。政府・自治体は現状よりも踏み込んだ企業への雇用支援策が必要です。今年夏には参議院選挙がありますが、ここでは雇用対策も一つの争点になっていくでしょう。
(2025.4.28 ジャーナリスト)