首都移転とか副首都の構想は何十年も昔からあるが、巨額すぎる費用と、東京都が手放したくないといった理由で全く進んでこなかった。
費用面を別にすれば、東京が何らかの災害で機能不全に陥った場合に備えたバックアップ機能は必要だ。
だがそれは大阪ではない。
現在最も大きな被害が危惧されるのは南海トラフ地震。この時にもしも東京が機能不全に陥るとしたら、大阪湾岸も低地なので大被害を受ける危険が大きい。「東京と共倒れする副首都」なんて作る意味がまったくない。
大阪が地方自治体として大阪の振興に熱心なのは当然だし、大阪府民、大阪市民が大阪の繁栄を願うのも当然だ。だから大阪を繁栄させてくれそうな勢力を支持するのもまた当然だ。
しかし維新は問題がある。それは都構想で露呈している。否決されたら特に情勢の変化もないのに投票のやり直し、それで再否決されたらまた大して変化もないのに投票のやり直しを目指す。一度可決されたら後戻りできないものを、自分らの意に沿わない投票結果が出たら何度でもやり直そうとする。まるで、ゲームで勝負の前にセーブしておいて負けたらロードしてやり直すかのようだ。
私は憲法9条の改正には賛成だが、改正を目指す自民党がなかなか国民投票に向けて走らないことについてもまた賛成している。というのは、憲法改正という重大案件である以上、それが国民投票で可決されても否決されても結果は絶対的に重視されなければならない。否決されたら、国内情勢や国際情勢がよほど劇的に変化しないかぎりそれなりの長期間、再び投票にかけることはできない。重大案件で示された民意は為政者が正しいと思っても間違いだと思っても勝手にくつがえすことは許されないからだ。だから改憲を目指す自民党は、国民投票で可決されるよほどの自信がなければ発議することができない。
もしも維新のやり方が許されるなら、憲法改正も否決されたら政府広報や草案にちょっと工夫を加えて、可決するまで何度でも投票を繰り返すことができる。普通はそんなことをしたらむしろ逆効果で反対票が増えるだろうが、何かのハズミか何かの風で、ひょっこり可決されることがあるかもしれない。国の骨格を左右し、後戻りできない案件について、否決の民意を無視して「下手な鉄砲を数撃って当てる」ようなやり方は許されない。
憲法ほどではないにせよ「大阪都」で「否決の民意」をスルーするような維新に重大な案件は任せられない。日本のためではなく大阪だけのために大阪を副首都にしようとするのも、大阪自身がそれを望むことは否定できないが、日本として仮に副首都を作るなら東京と共倒れしない場所が必須条件だ。それをどうするかは、結局、政権を持ってる自民党次第。大阪や維新が何を言っても自民党がNOと言えば通らない。
少数弱体与党になった自民党が、議席の数合わせ目的なんかで維新の口車に乗らないことを祈る。
