(9)ルキアノス
ルキアノス(サモサタのルキアノス、ルーキアーノス、古希: Λουκιανὸς, Loukianos, 羅: Lucianus, 英語: Lucian of Samosata、120年ないし125年頃 - 180年以後)は、ローマ帝国期にギリシャ語で執筆したアッシリア人の風刺作家。『本当の話』『嘘好き』など多くの著作が伝わる。
ルキアノスはシリアのサモサタ(現在のトルコのアドゥヤマン県サムサット)で生まれ、アテナイで没した。父親の職業は不明だが、祖父と叔父が石工であり、ルキアノスを叔父の徒弟にしようとしていた。若き日は哲学、弁論、医学など様々な分野種々の流派の学問を聴講し勉学を積んだが、やがて弁論の虜になる(後年、弁論による興行的な活動にも従事している)。シリア属州生まれゆえの「夷狄訛り」を克服し、ギリシャ語と弁論術を習得して弁論家として一本立ちする。アテナイで弁論家及び弁護士として活躍もしていた他、一時アンティオキアで弁護士の仕事もしていたと伝えられている。イタリアや大西洋岸ガリアなどへ旅行し、彼の地にて誇示的な演説を披露し、成功を収めてさえいる。また、ガリアに一時的に居住していたともされる。
彼は80以上の作品の著者とみなされているが、それら全てを著わしたわけではないと考えられる。最も知られている著作としては『神々の対話』と『死者の対話』があげられる。 風刺作品に『ペレグリーノスの昇天』があるが、この作品では主人公のペレグリーノスがキリスト教徒たちの寛大さとだまされやすさにつけ込むという話が展開されている。これは非キリスト教徒から見たキリスト教をとらえた書物で現在残っている初期のものの一つである。
詩『嘘好き Philopseudes』に基づきゲーテがバラッド『魔法使いの弟子 Der Zauberlehrling』を書いた。そのフランス語訳に基づき、デュカスが交響的スケルツォ『魔法使いの弟子』を作曲した。
また、『本当の話』という作品では、月への旅行譚を書いており、しばしば最古のSFの一つとして言及される。有名な『ほらふき男爵の冒険』における、月旅行のエピソードや巨鯨に呑み込まれるエピソードは本作のプロットを借用したものである。
【『本当の話』あらすじ】
「私」と50人のギリシアの青年たちが、ヘラクレスの柱を超えて未知の海域の探検に乗り出す。彼らが80日間の航海の結果、最初に発見した島は「ヘーラクレースとディオニューソス到来の地」で、ぶどう酒の川があり酒粕の魚が泳いでいた。彼らは2人の仲間をこの地で失い、先へ進む。
つむじ風で船が飛ばされ、七日七晩の空中旅行の末、彼らは月に着陸する。その時、月世界(エンデュミオーンを王とする)は明けの明星の領土を巡って太陽(パエトーンが王)と戦争を始めるところであった。青年たちは月世界側に与して戦う。味方の乗用動物は頭が3つの大鷲や巨大な蚤。敵は巨大な蟻。武器には通常の剣に加えてアスパラガスの槍や投擲用辛子大根が使われた。戦いは月世界側が一時的に勝利を得るが、銀河から遅れてやって来たケンタウロス軍が戦況を一変させ、結局は太陽側に有利な講和条約が結ばれる。
月を後にした青年たちは明けの明星や、ヒアデス星団とプレアデス星団の間にある「灯明の国」に立ち寄った後、海上に戻る。三日目の朝、巨大な鯨が現れて船を呑み込む。鯨の体内には陸地があり、森が茂り、陸上生物も住んでいた。彼らは何十年もそこに暮らしていたキプロス島人の親子を助けて、蟹手族・鮃足族・鹹魚族といった半魚人種族たちを征伐する。
鯨から脱出した彼らは氷の海、牛乳の海を抜けて「神仙の島」に着き、ホメーロス、七賢人、ディオゲネス、ピュタゴラス等々の有名人と出会う。青年たちは航海を続け、「糸瓜の海賊」・「イルカに乗った海賊」の撃退、巨大なカワセミの巣の発見、「牛頭族の島」への寄港を行なう。「驢馬の脛」の島では女妖怪の餌食になりかけるが「私」の機転で難を逃れる。
物語の終盤で、青年たちは未知の大陸に到着するが船は岸に叩きつけられて壊れてしまう。大陸での冒険は次稿で語ることにする、との旨が述べられたところで物語は終わる。