「いやー……。それにしても大変でしたねー。」
崩れて、バスの中……座席周辺に散乱した、積み上げられていた物品を、元々積み重ねられていた場所に戻しながら、かばんはラッキービーストとフレンズ達に語りかけた。
「とりあえず、バスの外に落ちてたのはぜんぶ拾ってきたよ〜!」
サーバルがバスの外から、たくさんの荷物を抱えながらバスの中にいるフレンズたちに語りかける。
「ほんとにもー、ああいうことはもう勘弁してくれなのだ」
忙しなくその手を動かしながら、アライグマは気だるそうにため息をつく。
「全くだよ〜」
同意するフェネック。
「ボスも今度会ったら、みっちり叱ってやらないとだめなのです。」
アフリカオオコノハズクがラッキービーストに向かって、すこし不満げに語りかける。
「そうなのです。」
アフリカオオコノハズクの言葉に続き、ワシミミズクもそんな彼女の言葉に同調した。
「コンゴハボクモキヲツケルヨ。」
口々に吐き出されるフレンズ達(+かばん)の言葉に、ラッキービーストはバス点検の片手間に、相変わらずの無機質な声でそう答えた。
「これは……私の鉛筆か」
呟きながら、タイリクオオカミは自分の足元へと手を伸ばす。
そんなことなど知らず、多くの荷物を運び込むサーバルがタイリクオオカミの手に足を引っ掛けた……
「うわあああああ!」
……ガッシャーン!
「サーバルちゃん!」
慌てふためくかばんの声が、バス外まで響き渡った。
【オープニング】
……数分後。
散乱した物の片付けを終え、かばん一行は各々の席へと座り込み、気力を失ったように項垂れた。
「疲れたー!」
カワウの件(※前回参照)の後片付けを終え、フレンズ達は口々にそう吐き出した。
「ミンナ、カタヅケオツカレサマダヨ。」
ラッキービーストはかばん含むフレンズたちに労いの言葉をかけると、各々にジャパリまんを一つずつ差し出した。
「ありがとうございます、ラッキーさん。」
かばんはラッキービーストにお礼を言うと、ジャパリまんを頬張りながら少しだらしなく背もたれに肩を預けた。
かばんは、ふと横を見ると、また一人のフレンズがバスに近づいていることに気がついた。
「みんな、また誰か来たみたいです。」
かばんの言葉に、フレンズたちは一斉にバスの外を眺めた。
「また鳥のフレンズなのだ?」
「今度はもうさすがに、変なことは起きないのですよね?」
少し前のカワウの件のおかげで、バス内のフレンズたちにそんな不安が募る。
しかしそんな不安も束の間、かばんたちの前に現れたフレンズはやけに気取ったような面持ちでかばんたちに語りかけた。
「こんにちは、旅の方々。この先の滝に、とても美しい風が吹いているんです。よければ、ご一緒しませんか?」
ふわりと腕をはためかせ、そのフレンズはかばんたちの目を見つめた。
「とりあえずはまあ、大丈夫そうだねぇ〜」
フェネックがいつも通りのゆったりとした話し方で、そんなことを口にした。
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「わたしはツバメ。空の旅をしていて、たまたまこの辺りに降り立ったところです。」
▼■■■■■▼ スズメ目 ツバメ科 ツバメ属
■ ■ ■
■ ■ ■ ツバメ
■ ■ ■
■■ ■ Barn Swallow
ツバメはそう言って優雅に一礼をする。
「よろしくお願いします、ツバメさん。」
かばんの返答に、ツバメは満足げに顔を上げると、フレンズ達の顔を覗き込む。
「……なんなのだ?」
アライグマの言葉にツバメはハッとした表情を浮かべ、二三歩ほど後ずさり答えた。
「まじまじと見つめてしまいすみません。みなさん、どうやらお疲れのようですね。」
「まあ……いろいろとあったのです。」
先ほどの災難を思い出しながら、アフリカオオコノハズクがそんな声を上げる。
そしてそんな言葉を聞いたツバメは、バスの行く先へと向き直ると、落ち着いた声で答えた。
「では、ひとときの休息がてら……風を感じに行きませんか?」
ツバメはくるりと向きを変え、バスの進行方向――木々の間から音を立てて流れる水の音がわずかに届く方角を、羽をやや広げながら示した。
「なんだろう、耳を澄ましてみたら、なんだかちょっと音が聞こえるよ〜!」
サーバルがピョコピョコと耳を揺らしながら、音の聞こえる方向へ顔を向ける。
「ソウイエバカワウガボウソウシタセイデワスレテイタケド、ココカラスコシイッタサキニ、コンカイメザシテイタ『タキ』ガアルネ。」
音に反応するサーバルを横目に、フレンズ達の会話を聞きながらいそいそとジャパリまんを片付けていたラッキービーストが、そんなことを呟いた。
「そうそう。私が話してたのも、その『たき』の事です。」
ツバメはひらひらと翼をはためかせながら、にこやかに語った。
「ならこのまんま進もーよ!ツバメちゃんも乗ってく?」
サーバルが滝の音に胸を躍らせながら、そんなことを口走る。
「皆さんが行くのでしたら、私もご一緒しようかしら。」
「ソレジャア、シュッパツスルヨ。」
「おっけー!」
いつも通りラッキービーストの単調な呼びかけに、サーバルが右手を軽く上げながら元気よく応える。
バスがゆっくりと発車し、かばんとフレンズの一行はまた、新たな目的地へ向かって走り出す――
「止まってください!」
かばんの呼びかけに、ラッキービーストは急いでバスを止めた。
少しだけ進んだ先、かばんは道の先にフレンズたちにとっての脅威……即ち、セルリアンの集団がいることに気がついた。
「あれじゃ、通れませんね……。」
かばんは困り果てた様子で眉をひそめながら、フレンズたちの方へ目線を向け語りかける。
「ラッキーさん、ここ以外にこの先に行ける道ってあるんでしょうか?」
「ボクモミチヲカエタイトコロダケド、アイニクコノミチイガイニイケルミチハ、カナリトオマワリニナッテシマウンダ。」
かばんの問いかけに、淡々と答えるラッキービースト。
「うーん……。」
ラッキービーストの言葉を聞き、戸惑いかばんは少し虚空を見上げながら考える。
――そんな時だった。
「突っ込め!群れごと粉砕でござるー!」
見える道の脇、茂みの中から一人のフレンズが飛び出し、そんなことを口走りながらセルリアンの群れへ向かって勢いよく突進した。
「ええっ!?」
かばんはあまりの突然の出来事に頓狂な声を上げながら、その声が聞こえる方向へと向き直る。
目線を向けた先では甲冑のようなものを身につけたフレンズが、セルリアンをなぎ倒しながら前へ前へと突き進んでいる。
「すっごーい!何あの子何あの子!強くない!?」
様子を見てサーバルは興奮したような声色で言った。
会話をしている間にも、そのフレンズは自身の前に現れたセルリアンを、華麗な手さばきでなぎ倒していく。
「私達も協力しようよ!」
……サーバルの呼びかけを発端に、バスの中のフレンズたちも慌ただしく動き出した。
「なのだ!アライさんも行くのだ!」
アライグマが勢いよく立ち上がり、尻尾をピンと立てながらバスの外へと飛び出した。
「やれやれ、仕方ないのです。」
アフリカオオコノハズクとワシミミズクも互いに目を合わせ、息を合わせて羽ばたきながら続く。
「フェネックさんも、行くんですか?」
「行かないと仕方ないよねぇ〜」
フェネックも肩をすくめ、のんびりとした調子のまま足を進めた。
「タイリクオオカミさんも……」
「……ああ、こういうの、嫌いじゃないよ。」
呟くと同時に、タイリクオオカミも他のフレンズたちの後を追った。
「皆さん、どうか無理はしないでくださいねー!」
かばんも行きたいところではあったが、生憎のところラッキービーストに止められた。
「うみゃみゃみゃ……みゃー!」
いつも通り張り切りながら、セルリアンへと拳を下ろすサーバル。
「なんでござるか……うわぁっ!」
サーバルの声に気をとられ、そこにいたフレンズは足元への注意が疎かになり、よろめく。
「大丈夫なのですか!?」
倒れたフレンズを見かねて、一匹のセルリアンが近付く。
「くっ……、ここまででござるか……?」
万事休すか……。
そう思ったフレンズは俯き、目を瞑りセルリアンからの捕食を覚悟する。
……刹那、横からタイリクオオカミが飛び出し、目の前のセルリアンに向け勢いよく拳を振り下ろした。
「た、助かったでござるか……?」
度重なる突然の出来事におどおどとした様子を見せながら、そのフレンズは前に立つタイリクオオカミへと視線を向けた。
「危なかった。大丈夫かい?」
タイリクオオカミは言いながら髪の毛をかき分けると、そのフレンズに向け手を差し伸ばした。
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「キミのお陰で助かったよ~!」
サーバルがホッ、とした表情でバスの座席に座り込み、新たなフレンズのいる方向へと顔を向けながら、胸をなで降ろす。
「みなさん、お疲れ様でした。」
かばんは疲れた表情のサーバルを横目に、新たにバスに乗り込んだフレンズへと目を向けた。
「あなたは、なんのフレンズさんなんですか?」
かばんの言葉にフレンズは立ち上がると、胸を張り、軽く手を当てながら自己紹介を始めた。
「拙者の名は、ニホンイノシシでござる。最近、このあたりでセルリアンがウロチョロしていたもので、片付けに興じていたでござる。」
▼■■■■■▼ 鯨偶蹄目 イノシシ科 イノシシ属
■ ■ ■
■ ■ ■ ニホンイノシシ
■ ■ ■
■■ ■ Japanese Wild Boar
「なるほど、今のセルリアン達だけ、というわけではないんですね。」
かばんはニホンイノシシの言葉に、「もしかしたら他にもいるのかもしれない」と推測する。
「拙者も下流の方から登ってきて、セルリアンを倒していたでござるが、このあたりになってきて少しセルリアンが強くなってきたでござる。」
「もしかしたらこのへんに、セルリアン達の拠点があるのかもしれないのです。」
「可能性は高いのです。」
アフリカオオコノハズクが横から顔を出し、ワシミミズクがそれに頷く。
二人の言葉を聞いてかばんは「うーん」とあごに拳を軽く当てて考えた後、口を開く。
「少しだけ、滝の方までバスを動かしてみましょうか。」
「リョウカイダヨ。」
ラッキービーストは答えたあと、バスを運転し始めた。
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