波多野ゆら
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2026/05/04 (月) 00:41:25
逆牛丼屋
店の中では、すべてが少しずつ噛み合っていない。
入った瞬間、何の店なのか分からないまま席に案内される。客は全員集団で、会話は少ないのに空気だけは共有されている。
店員は老若男女そろっていて、誰が中心なのかも分からない。
「今日はどうされますか」
そう聞かれると、こちらは一応答える。すると店員はうなずき、別の場所にある食券機へ向かう。そしてそこで、店員自身が食券を購入する。
客はその様子を見ているだけになる。
しばらくしてメロンソーダが出てくる。これは例外なく出てくる。牛丼との相性は考慮されていない。
さらに紅生姜の代わりに、妙に青いグミが添えられている。説明はない。使い道も分からない。
そして牛丼は遅れて出てくる。
客は全体的にゆっくり食べる。急ぐ者はいないが、理由は誰も説明しない。
ある客が、ぽつりと言う。
注文制と食券制の両立、実に無駄だ
誰に向けた言葉でもない。ただ空間の構造をそのまま言語化しただけのようだった。
しかしその瞬間、周囲の誰も反応しない。
店員も何も言わない。
ただ、少しだけうなずいたように見える。
その店では今日も、牛丼がゆっくりと出てきて、メロンソーダが当然のように並び、青いグミが静かに皿の端に置かれている。
そして誰も、それを特に問題だとは思っていない。
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