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実は私、ChatGPTに聞いてみたことがありまして。
今後さらにAIが進化すると、その最大の用途は戦争になるんじゃないか。単に短期的に最も敵にダメージを与える攻撃目標を選ぶだけでなく、より長期的な戦略でもAIが人間を完全に凌駕する。そうなると、戦争はAI同士の戦いになり、より高性能なAIを持つほうが勝利する。しかし人間はAIの過剰な進化を恐れてもいる。そこでAIを規制する国際条約ができるだろうが、これは「破った者勝ち」で、条約を守った国は破った国に手も足も出なくなる。民主主義国の場合、良識を優先する人が意見を主張するから、意見の対立が起きてAIの発展に邁進できない。一方、強権的な国では民意など無視して開発に専念する。この結果、強権的な国が民主主義国に勝利し、その国民の統制にもスーパーAIを使うので、結果として強権的、独裁的な世界になる…というリスクはないか?
これに対してChatGPTはそういうリスクは懸念されるし、それを指摘する人もいるとの話でした。
中国が台湾の半導体技術を欲して、それを目的に侵攻するリスクももちろんあると私は思います。④にしても、計算能力の高さがAIの能力の決定的要因でなくなっても、計算能力が高いほうが有利であることは変わらないでしょう。
しかし中国が電撃的に台湾全土を制圧するなんて理想的な展開はまずありえません。勝敗は分かりませんが、長期戦になることが見込まれます。TSMCの持つような他に真似できない技術を中国が手に入れたら脅威になることは、アメリカも認識しているはずです。つまりそういう事態になったら、アメリカは台湾の技術者を積極的に受け入れるはずだし、技術者のほうもアメリカへの避難、もしも台湾が占領されたらそのまま亡命、を考える人が多いでしょう。技術者の亡命によってナチスドイツの原爆開発が遅れてアメリカに先を越されたような感じです。
中国としては、逆にそれを恐れるはずです。台湾が最先端技術を持っている現状ならまだしも、その技術者がアメリカに渡ってしまったら、アメリカの投じる予算は台湾の比ではありません。台湾侵攻によって中国経済が疲弊している間に、アメリカに大躍進を遂げられるおそれがあります。
もうひとつ、上には民主主義国の弱点(民意の対立でひとつの方針に全力で邁進できない)をあげましたが、今度は中国のような国の弱点です。台湾の技術を取り込めば中国は大いに発展しますが、足元では経済的疲弊で政情不安になります。つまり、習近平が命がけで奪取した台湾の先端技術の恩恵を受けるのは「次世代」になってしまい、習近平自身は国家疲弊の罪が残ってしまいます。政敵は、倒したい敵にすべての罪を着せて、敵の功績をすべて奪い去ろうとします。殷の紂王が比類なき暴君に仕立てられたのも、周が殷を倒した「反逆」を正当化するためです。
習近平にとって台湾侵攻にメリットがあるとすれば、まず成功することが大前提。ここに大きなリスクがあります。仮に成功しても、技術は中国よりもアメリカのものになるリスクがあります。さらに確実に中国の経済力が大きなダメージを受けます。AI技術を手に入れて大躍進できる場合でも、それは次世代の果実になってしまい、自分は国力疲弊の罪だけを負わされるリスクもあります。習近平は、自分の功績を奪い取った次世代の「英雄」の手によって大悪人に仕立てられる危険をあちこちに背負います。
強権的な国は権力者個人の利益で国が動くというのが弱点で、私は習近平はやらないと思っています。さんざん脅迫はするでしょうが。
むしろロシアを攻める可能性もあります。習近平は「中国のために台湾を攻める」のではなく、偉人として名を残すために台湾を欲しています。中国にとっては、ウラジオストクなどを含むロシア極東も、アヘン戦争で失った「失地」です。しかもアヘン戦争はものすごく理不尽な戦争であるとともに、中国(清)が戦った相手はイギリスなのに、負けて戦力を失ったすきにロシアに便乗されて奪われました。今、ウクライナとの戦争で疲弊し、欧州に戦力を集中させるロシア極東は手薄で、しかもロシアを擁護する大国はありません(トランプが個人的に親露ですが任期が終われば)。核大国ということを除けば、台湾よりも奪う難易度がよほど低い。「ロシアと組んでアメリカに対抗する」のが中国の基本方針とはいえロシアがそのパートナーとして機能しなくなれば、あり得る話です。それでも習近平は、アヘン戦争の失地を回復した英雄になれますから。たぶん、プーチンもそれは恐れていると思います。