好意感情と代償感情
オルガはニュースへの好意を隠さないし積極的にスキンシップもする。ニュースはそれには兄のような態度であしらいつつ、姉のパンドラもニュースのことが好きなのを、ニュースも知らないわけではない。パンドラとニュースは互いに対等に冷静に相手しつつ、その関係は進展する様子もない。
「ニュースは優柔不断なのか」と2年前に疑問を上げたことがあった。シーメルのコンラは、「コンラははっきりしない」と作中で女子(インプ)から優柔不断認定されてしまっている。そういう恨み感情がパンドラにあると面白いけど……。
3章の3話目でニュースは自己分析している。オルガが幼児期の記憶を悪夢に引きずっているのはパンドラも同じことだ。オルガは、そのトラウマの身代わりにニュースに甘えついている節がある。オルガのそれを客観的に見ながら、ニュースとパンドラの互いの好意感情もやはりそれぞれの心の傷の代償ではないか、そうだろうと自覚していて、傷を舐め合うように求めあうには引いて距離を取っている。
「みんな、傷を背負って生きている。暖め合うことのできないのが人だ」
「……そうかもね……」
好きだとは思っているけど諦めているような感情は、遥か年月が経って後にオデュセイアから指摘される頃までパンドラはずっと引きずっている。上の1800年というのがいまいち曖昧だが、幼児トラウマを1800年引きずって幸せになれないとしたらなんと強力な呪いだろうか。ニュース関係の物語はそこまでで続編ない。
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AMでは……というか同じ『スターダンス』作中で、シシの伝説をみればトラウマを1億年引きずって思い続けるなどあるから、1000年くらいの時間単位は珍しいわけじゃない。
オルガは肌が黒くなって自分でどう思ったかのようなエピソードはない。人種や膚の色をハンディと思っていなければ相変わらずでいるかもしれない。パンドラは性別が変わってしまい、もとは心理的に線を引いていたのが、物理的身体的にも線が引かれてしまった。ニュースへの気持ちが変わったわけではないので自分の体のことを辛く思うこともあるだろう。作中にはそんな描写も説明もないので、惜しいといえば惜しい。BLよりSF的に美味しいけど、ここは原作は語らずか。
もうひとつ今思ったのは、こういう内省的で自分の感情を押し殺すのはパンドラのような理系女子にはわかる気がするが、ニュースの場合、それでも男の生理というものは目の前の女の子が気のある素振りをしていていつまでも自制できるものだろうか。据え膳食わぬは恥ともいう。
ニュースは十代で博士号という天才青年で、ありふれた世間の男よりも自分をコントロールできすぎてしまうのかもしれない。「俺は性欲ないから」みたいなキャラではなさそうだが。