つぎはけもフレ1期アニメ終了後直後の物語を考えてその考えたものをaiにまとめたり加筆修正させてみました
なので少しガバガバですがよかったら...
あと、けものフレンズ+iの要素もあるかも?
タイトルは「うなばら」です
空の色を映したような海が、どこまでも広がっていて静かな波の音の中に、一羽のカモメがふらりと右手から現れ、羽を大きく広げて「クァーッ」と一声鳴くと、そのまま水平線のかなたへと飛んでいった。
そして、ザァーッ、ザァーッ……寄せては返す波の音に、海鳥の声が重なった。
そんな穏やかな海の真ん中に、丸太を組んで浮かべたジャパリバスがぽつんと浮かんでいた。すぐそばでは、一人のフレンズが「わーい!」と楽しそうな声をあげて、盛大に水しぶきを上げている。
「あははっ、元気なフレンズさんですね」
運転席から顔を出したかばんが、笑顔でその子を見つめていた。
「私も負けないんだからっ!」
声とともに、バスの天井からピョーンと跳んでは着地をしたのはサーバルだ。着地の瞬間、ボンッという音とともにバスが少し沈み込む。けれどすぐに、何事もなかったかのようにもとの高さまで浮かび上がった。
「わーいっ!」
サーバルは「うみゃっ!うみゃっ!」と声を弾ませながら、跳んでは着地を、何度も何度も繰り返している。
バスの中からは「ふっ……ふわぁっ!?」という声と、ドタドタという慌ただしい足音が響いた。窓からひょっこりと顔を出したのは、アライグマだ。
「なっ、なんなのだ!?」
必死にバスの上を見上げるアライグマの隣に、フェネックがひょっこりと現れる。
「んー、誰かが飛び跳ねてるみたいだねー?」
フェネックにぽかんとした顔を向けたアライグマは、すぐにまたバスの上へと視線を戻した。
「……な、何ぃーっ!?あれは……さっ、サーバル!?とっ、飛び跳ねるのはやめるのだーっ!」
「サーバルちゃん、危ないよー?」
かばんがそう声をかけても、サーバルはどこ吹く風だ。
「へーきへーき!ほらっ、楽しいよ?かばんちゃんもやってみない?」
飛び跳ね続けるサーバルに、かばんは苦笑いを浮かべる。
「えっ!?えーっと……ぼ、僕はいいかな」
そのとき、少し離れたところで水しぶきを上げていたフレンズの目が、キラリと輝いた。
「すっごーい……わたしもとんでみたーい!」
「えーっ!?」
困惑するかばんをよそに、そのフレンズは海から大きくジャンプすると、ザバーッと大きなしぶきを上げて着地し、バスが横に大きく揺れた。
「うみゃっ!?」
濡れた足元を滑らせて、サーバルがそのまま海にドボンッと落ちてしまった。
「うみゃ〜っ!?」
水面でバシャバシャともがくサーバル。
「さ、サーバルちゃん!?」
「あっ……助けなきゃ」
そう呟くと、そのフレンズはザッと勢いよく海に潜った。
「……えっ?」
隣を見ると、いつの間にかその子の姿が消えている。
「……あれっ?さっきまでここに……」
かばんがそう首をかしげた直後、左手のほうでザッバーンという水音が響いた。振り向くと、あのフレンズがサーバルを下から支えるようにして、水面へと持ち上げているところだった。
――――――――
ジャパリバスの客席、木のベンチに座って、サーバルはほっと息をついていた。
「たすかったよー」
「気を付けようね……?」
苦笑いのかばんに、サーバルは頭をかきながら答える。
「ごめんごめん、あそこのフレンズが楽しそうにしてたからつい……」
「つい……じゃないのだっ!ボンボンなってて怖かったのだぁーっ!」
かばんの右手側に立ったアライグマが、びしっとサーバルを指さした。
「まーまーっ……サーバルに悪気はなかったみたいだし、サーバルも反省してるっぽいしさー?許してやってもいいんじゃないかなー?アライさーん?」
「ぐぬぬ……納得いかないのだ……」
当のサーバルはといえば、「うみゃ?」と、何が起きているのかまるでわかっていなさそうな顔をしている。
「あはは……」
かばんが呆れたように笑ったところで――勢いよく、あのフレンズがバスの運転席にザバッと顔を出した。ゼロ距離で、かばんと目が合う。
「た……食べないでくださーい!!」
「え〜っ?食べないよー!」
困った顔をした彼女は、続けて申し訳なさそうに言った。
「ごめんね?驚かせちゃったかな……」
「あっ……いえ、ちょっと驚いちゃいましたけど大丈夫です、えーっと……」
「あっ、私はマイルカだよ!みんなからマルカって呼ばれてるんだー!」
「初めまして……かばんっていいます」
「私はサーバルキャットのサーバルだよっ!あと……」
サーバルが後ろを振り返る。
「後ろにいるのが……」
「アライさんなのだ!」
「フェネックなのさー」
「…….あっ、よ……よろしくね!」
一瞬、マイルカの体がぴくりと固まった。フェネックがその様子を不思議そうにじっと見つめている。
「あのぅ、ぼくたちゴコクエリアっていうところに行きたかったんですけど、バスの電池が切れてしまって動けないんです……」
「あれー?かばんさーん、ゴコクエリアって何ー?」
「えーっと……」
言いよどむかばんの横から、マイルカが元気よく手を挙げた。
「あっ、ゴコクなら私も知ってるよーっ!」
「なにーっ!お前ぇ、知ってるのかー!?」
「うんっ!だって私、探検隊だったからっ!」
「探検隊?」
サーバルとかばんの声が重なる。
「...って何なのだ?」
「探検隊はねーっ!」
「うんうん」
期待に満ちた顔で頷く二人に、マイルカは――
「……何だっけ?わっかんないや」
「えーっ!?」
「マイルカは本当に探検隊だったのかーっ?」
首をかしげるアライグマに、マイルカは迷いなく頷いた。
「うんっ!」
フェネックだけは、何も言わずにじっとマイルカを見ている。
「なら何でわからないのだ?」
「……どうしてなんだろう?ずっと一緒に冒険してきたはずなのに、思い出せないんだよね、えへへ……」
その言葉に、場の空気がふっと静かになった。
「……マイルカ、ごめんなさいなのだ……」
「えっ?」
「んー?アライさーん、何かやらかしたっけー?」
「……いや、何でもないのだ……」
「……あの、マイルカさん?」
「どうしたの?かばん」
「ゴコクエリアってどんなところなんでしょうか?」
「あー、そうだったね!えーっと、ゴコクはね海に囲まれてて、山がたっくさんあるところなんだよー!」
「そこにフレンズさんって……いますか?」
「えーっとね……いるよー!たっくさん昔はフレンズたちがいたんだけどね?今は少し少なくなっちゃったんだよねー」
「もしかして……食べられっ……」
「ううん、食べられたんじゃなくてみんな他の場所にいっちゃっただけだよ」
「他の場所ってー?」
「えーっとね、サンカイとか……あと、アンインとかかなー……セルリアンが最近たっくさん現れてるからだと思うんだー……でも」
「でも?」
サーバルとかばんが、揃って続きを促す。
「私が気がついた時にはもうフレンズが少なくなってたし……それにゴコクにいたフレンズたちに聞いた時にそう言ってたからはっきりとはわかんないんだー……ごめんね」
「……いえ、ここまで教えてくれてありがとうございます!」
「…えっ?」
「マイルカさんが、詳しく教えてくれなかったら多分、僕たちゴコクエリアのこと、ここまで知ることができなかったと思うんです」
マイルカは何も答えなかった。ただ、その目からほろりと涙がこぼれ落ちる。
「えーっ!?マイルカ、どうしたの!?」
「えっ?どうもないよ?」
「うそなのだ、どうもなくないのだ。……マイルカ、泣いてるのか?」
「……あれ?どうしてかな……?悲しくないのに……」
「えーっ!?あ、あの……ごめんなさい……」
「ううん、大丈夫!ちょっと懐かしくなっただけ」
「懐かしく?」
「うん……何も思い出せないんだけど、そんな気がしたんだー、おかしな感じだけど」
しばらく黙っていたアライグマが、ぽつりと言った。
「...それはきっと思い出なのだ」
フェネックが小さく名前を呼ぶ。
「アライさん……」
「昔のマイルカの記憶なのだ。楽しい事とか辛い事とか……色々ギュッて詰まったものなのだ」
「でも……私、昔のことはあんまり……」
「昔の思い出はいつかは色褪せて、忘れちゃうものなのだ……、それは辛いことだけどしょうがないのだ。でも……」
アライグマは、いつになく真剣な顔で続けた。
「自分の心のどこかにきっと残っているはずなのだ。たとえ思い出せなくても……そんなものなのだ」
「アライさんもフェネックといる事は忘れないのだ!それにな?……もしも忘れてしまったら思い出せばいいのだ!……」
「……ありがとう、何か大切なことを忘れてた気がするけど、アライさんのおかげでわかったよ」
「……?どういたしましてなのだ!」
かばんは、その様子を静かに見つめていた。
「かばんさーん?」
「あっ、フェネックさん……どうかしたんですか?」
「はかせじょしゅから聞いたんだけどさー、電池がなかったらバス、動かせないよねー?どうするのー?」
「あはは……どうしましょう?」
「えーっ!?」
サーバルが慌てた声をあげる。
「あっ、かばんちゃんには言ってなかったっけ?」
「ばすてきはなっ!まんまるを見つけるために、博士たちからもらったものなのだ!」
「まんまるってなーに?」
「ええーっ……ぼくにいわれてもよくわからないですってぇ……」
「あー……えーっとねぇ?こんぐらいのバスを走らせるためのまんまるがあってねー?それを探すためにばすてきっていうー、のりものをはかせじょしゅから貸してもらったのさー」
説明になっていないような、いないような。そんなフェネックの言葉に応えるように、かばんの腕元でラッキービーストが小さく光った。
「かばん、多分それはタイヤだと思うよ」
「たいや……ですか?」
「タイヤはね、バスや車などが走る上で大切な部品なんだ」
「へぇー!」
「アライさんとフェネックさん達はわざわざ僕のために……」
「大変だったけど、ピッカピカなのを見つけてきたのだっ!」
「かばんさんのためならどんとこいだよー?」
「あれっ?でも、このバスはどうするのー?」
「えっ?」
「たぶん、ばすてき?を使えばゴコクまでつくことはできると思うけど、このバスを運ぶんだったら大変だと思うよ」
「どうして?おしていけばいけるんじゃないかな?」
「ばすてきならアライさんにお任せなのだ!」
「アライさーん、多分これはマイルカの言っていることが正しいよー」
「ふぇ、フェネックぅ!?」
「海の上で重いものを動かすのって大変だよー、それに、波で押し戻されちゃったらやり直しになるだけだよー?」
「うーん……」
「かばんちゃん、どうにかならない?」
少し考え込んでから、かばんはゆっくりと手を挙げた。
「あっ...、あのー……うまくいくかはわかりませんが……」
「あっ、何かいい案でも思いついたんだねっ!」
「うん……でも、ちょっと自信ないけどね……?あの……アライさんとフェネックさん、そしてマイルカさんも手伝ってくれますか?」
「りょうかいなのだっ!」
「うんっ!いいよー」
「はいよー!っで、かばんさーん……わたしたちはなにをすればいいかなー?」
「えーっと……アライさんとフェネックさんはまずあの乗り物を運転して僕が乗ってるバスを押してくれませんか?」
「お任せなのだー!」
「んー?でもかばんさーん……それじゃあ……」
「それからマイルカさん」
「なになに?」
「マイルカさんも泳いで押してくれませんか?」
「うーん……面白そう!いーよ!」
「ありがとうございます!あと、サーバルちゃん」
「なになに?私は何をすればいーの?かばんちゃん?」
「サーバルちゃんは……うーん、アライさんたちが押してる時にバスの向きがあそこの島の方向からずれてないか言ってくれないかな?」
「まかせてまかせて!」
「サーバルちゃん、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫ーっ!」
サーバルは右手でぐっとグッドサインを作ってみせた。
――――――――
「それじゃあーっ!お願いします!!」
かばんの合図に、三人の声が重なる。
「せーの!」
「わっせ、わっせ……」
「うーんっ!!」
「わーっすっご〜い!!かばんちゃん!動いてるよっ!」
「うんっ!」
けれど、波のせいでせっかく動いたバスも、すぐにまた元の位置へと押し戻されてしまう。
「...んー、アライさーん...多分だけどこれ、動いてないよー」
「ふぇ?」
「こんなに重いの、押したの久しぶりだよーっ...それにしてもぜんっぜん動かないねーっ」
「えーっ!?」
「うーん...どうしてだろう」
かばんは腕を組んで黙り込んだ。
そのとき、アライグマのお腹からグゥーっという音が響いた。
「フェネックぅ...お腹すいたのだーっ!」
「うーん...かばんさーん、そろそろご飯にしよっかー?」
「あっはい、そうですね...一旦休憩しましょっか」
――――――――
サーバルは、袋いっぱいのジャパリまんに手を伸ばし、そのうちの一つをチョンチョンとつついていた。何度も、何度も。
「......。」
「あーっ!そのジャパリまんはアライさんのものなのだーっ!!」
サーバルはとっさに、触っていたジャパリまんを背中の方へ隠すようにした。少し気まずそうな顔で。
「え...えーっと、私...知らないよっ!!」
「アライさーん...それ、多分だけどアライさんの勘違いじゃないかなー?」
「そ、そんなはずは...アライさんはみたのだ!サーバルがジャパリまんを盗み食いしようとしてたのをっ!!」
アライグマがびしっとサーバルを指さす。
「うーん、ま...いっか、これはこれで面白そうだし...」
「えーっ!?食べてないよっ!!」
「かばん、私もジャパリまん食べていいー?」
「えーっと...」
「みんなのジャパリまんだから食べても大丈夫だとおもうよー?」
「ふぇ、フェネックぅ〜!?」
――――――――
一同、ジャパリまんを頬張りながら、ひと息ついていた。
「あ、そうだ!押すのがダメなら、引っ張ってみたらどうかなー?」
「引っ張る、ですか?」
「うんっ!私が前に回って引っ張ってみるよ!」
そう言うと、マイルカは海に潜り、バスの前方から引っ張り始めた。
「んーっ!んーーーっ!」
けれど、バスはピクリとも動かない。
「あれー?おかしいなー……」
息を切らしたマイルカの声に応えるように、水面から顔を出す二つの影があった。
「マイルカ、頑張ってるみたいだけど……大丈夫?」
「私はシナウスイロイルカのナルカ。マイルカが呼んでいる音が聞こえたので、気になって来てみました」
穏やかな微笑みを浮かべたその子の隣で、もう一人が元気よく声をあげる。
「私はバンドウイルカのドルカ!元気いっぱいだね、マイルカ!でも一人じゃ大変そうだから、手伝うよ!」
「あ、あの、お二人は……?」
「あっ、ドルカとナルカだよ!私の妹たちみたいなものなの!エコロケーションで呼んだんだよ!」
「エコロケーション...?」
「何それ何それ!」
「エコロケーションはすっごく高い音をだして暗い海とかで会話をするときとか場所の位置を把握するときとかに使われるんだってさー」
「...なんかよくわからないけどすごいってことはわかったのだ」
かばんの腕元で、ラッキービーストがじっとフェネックを見つめていた。
「...ラッキーさん?」
「...どうしたの?かばん」
「なんか、不機嫌な気がしたので」
「ぼくはロボットだからそういった感情は持っていないんだ」
「そ、そうなんですね...」
「かばんちゃん、また今、ボスとお話ししてたの?」
「あ、うん。ちょっとだけ」
「いいなー、私もボスとお話できたらいいのにー」
「サーバルちゃん、この前したような...」
かばんがそう言いかけたところで、ドルカが小さく首をかしげた。
「ん?えっと...よろしくねー!」
「よろしくお願いしますね」
「わぁ、また新しいフレンズさんだ!」
「あの、皆さんも手伝ってくださるんですか?」
「もちろん!大変そうな子を放っておけないもんっ!」
こうして、マイルカ・ドルカ・ナルカの三人でバスを引っ張ることになった。
「せーのっ!」
三人がかりで引っ張っても、バスはやはり動かない。
「あれー?おかしいなー、私たち結構力持ちのはずなんだけどなー」
「……本当に、びくともしませんね」
そのとき、勢いよく海面を割って現れる影があった。
「マルカ!ドルカ!ナルカ!一体どこに行っていたんだ!」
立派な牙を持つそのフレンズは、心配そうな、それでいて少し怒ったような顔で近づいてくる。
「あ、イッカクだ!ごめーん、ちょっとこのバスを動かすの手伝ってたのー」
「はぁ...心配したんだぞ。マルカが一人でいなくなったと思ったら、今度はドルカとナルカまで姿が見えなくなって……」
「あの、すみません。僕たち、ゴコクエリアに行くのを手伝ってもらっていて……」
「...ゴコクエリアか。はぁ...」
イッカクは小さくため息をつくと、マイルカたちの甘えるような視線に負けたように、諦め混じりの声で続けた。
「...よし、せっかくだから私も手伝おう」
「あなたは...?」
「私はイッカククジラのイッカクだ」
「イッカクの牙、立派だよね。あれは角じゃなくて、実は伸びた歯なんだ。何のためにあるのか、まだよく分かっていないところもあるみたいだよ」
かばんは、少し感心したような顔で、イッカクの牙をじっと見つめた。
「早くイッカクも手伝ってよー」
イッカクは、かばんから目線をそらすようにして、マイルカの方を向いた。
「ああ、わかった。今行くよ」
こうしてイッカクも加わり、四人がかりで引っ張ることになった。
「せーのっ!」
渾身の力を込めて引いても、バスはピクリとも動かない。
「……くっ、これは手強いな」
「あちゃー、全然だめだー」
(うーん……どうすれば......)
四人の引っ張る背中を見つめながら、かばんは少し俯いたが、ふと何かに気づいたように顔を上げた。
(あ……)
「あの、さっきの押す方法、もう一回だけ試してもいいですか?今度はせーのの合図を僕に任せてもらえますか?波が引くタイミングに合わせて押したいんです」
「へー、波が引くタイミングかー。かばんさん、よく気づいたねー」
「よくわからないけど、やってみるのだ!」
「私たちも手伝うよー!」
「よーし、力を合わせるよ!」
「頑張りますっ」
「わかった、やってみよう」
「はい、お願いします!……まだ…まだ……今っ!」
「せーのっ!」
波が引く一瞬に合わせて、みんなが一気に力を込めた。ズズズ……と、今度こそバスがゆっくりと前へ進み出す。
「わーっ!動いてる、動いてるよ、かばんちゃん!」
「やったぁ…!」
「かばん、すごーい!」
「ほう……力任せではなく、波と息を合わせる、か。なるほどな」
「波の力を利用するなんて、いい作戦だね。かばん」
「あ、あはは…たまたま気づいただけです…」
かばんは照れくさそうに笑った。
――――――――
バスは、穏やかな波音とともに、順調に沖へと進んでいく。ふと遠くに、古びた鉄塔のようなものがぽつんと見えた。
「……あれは、何でしょう?」
「あー、あれ?昔のヒトが作ったものだって、ゴコクのフレンズが言ってたよ。この辺りの海には、そういうのがたくさん沈んでたり残ってたりするんだー」
「……そうなんですね」
かばんは何かを考えるような顔をした。
「かばんちゃん?」
「あ、いえ、何でもないです!」
すぐに笑顔に戻ったかばんだったが――そのとき、バスの周りの水面が、ふと不自然にざわめき始めた。
「……ん?」
水面を見たフェネックの表情が変わる。
「あれ……?なんか、様子が……」
水面がゆっくりと渦を巻き始め、その渦は見る間に大きくなっていった。
「な、なんなのだーっ!?」
「うわっ、バスが……!」
バスが渦に引き寄せられ、ぐらぐらと大きく揺れ始める。
「みんな、掴まって……!」
渦の勢いが増していく中、一同は必死にバスにしがみついた。しかし――渦の中心にもっとも近かったかばんの手が、バスから離れてしまう。
「かばんちゃん!?」
「うわ……ぁっ……!」
かばんの体は渦に飲まれ、そのまま水の中へと引きずり込まれていった。
「かばん――!」
マイルカが咄嗟に潜ろうとするが、渦の勢いに阻まれて近づけない。
「かばんちゃぁぁん――!!」
水面に、もうかばんの姿はなかった。バスも渦の外側へと大きく弾き出され、一同はどうにか無事だったが――
「……かばんちゃん……」
サーバルはただ、呆然と水面を見つめていた。
――――――――
「かばんちゃん……かばんちゃん……!」
サーバルは半泣きになりながら、水面を叩いた。
「そ、そんな……かばんさんが……」
呆然とするアライグマ。
「渦に沈んでいくの、見えた……多分あっちの方角……!」
「よし、手分けして捜そう!」
「...いや、いったん落ち着け。慌てても何も変わらないぞ」
イッカクの落ち着いた声に、その場の空気が少しだけ引き締まる。
「サーバル、アライさん、私たちは岸沿いを捜そうよー。かばんさんなら、案外近くの浜に流れ着いてるかもしれないしさー」
「分かったのだ!」
「うん……!」
「私とドルカとナルカは、水の中を捜すよー!」
「かばんの匂いや音を、たどってみますね」
「私はもう少し沖の方を見てくる。……マルカ、くれぐれも無理はするなよ」
「わかったー!」
そう言って、それぞれが違う方向へと散っていく。
「かばんちゃーん!」
岸を走りながら、サーバル、アライグマ、フェネックの声が重なった。
――――――――
一方その頃。海の中にある、薄暗い洞窟の奥で――
「......うぅーん...」
「...ここ...ゲホッゴホッ...」
咳き込むかばんの耳に、ほっとしたような声が届いた。
「よかった...目が覚めて...」
「うっ...」
かばんの目に、スマホのライトの光が直撃する。
「あ...ごめんなさい、眩しかったかな...?」
「...あ、はい...」
かばんは、まだぼんやりとする頭のまま、なんとか声を絞り出した。
「...あのーここは一体...?さ、サーバルちゃんは...!?」
「...落ち着いて、まぁ...落ち着けないとは思うけど...」
「...はい、すみません...」
「...ううん、大丈夫...」
「えっと...ここは...?」
「...えっとね。...ここは海の中にある洞窟で、偶然溺れてたあなたを見つけたから、助けないとって思って...近くに海と陸がつながったこの洞窟があったから、ここまで運んだの...」
「...そうだったんですね、ありがとうございます」
「...あとサーバルは、大丈夫。ねーさんたちといっしょにいたから...」
「...ねーさんってマルカさん達ですか?」
「うん...あっちが出口だから真っ直ぐ進んだ先にねーさん達とサーバルがいるよ...」
薄暗がりの中、指し示されたほうを見て、かばんは頷いた。
「...ありがとうございました!」
「気をつけてね...」
「はいっ!」
かばんは出口へ向かって歩き出す。その後ろ姿を、彼女はじっと見送っていた。
「...あのヒト、もしかして...でも、そんなはず...?」
薄暗がりの中、その表情はよく見えない。かばんも、暗さと霞む視界のせいで、助けてくれたフレンズが何のフレンズだったのか、最後までよくわからないままだった。
――――――――
洞窟の出口から、眩しい光とともに、かばんは外の砂浜へと出た。
「うわっ、まぶし……」
目を細めるかばんの耳に、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。
「――あっ!!かばんちゃん!!」
遠くから駆けてくるサーバルが、勢いよくかばんに抱きついた。
「よかったぁぁ……!かばんちゃん、無事だったんだね……!」
「サーバルちゃん……うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「よかったのだ……ほんとうによかったのだ……」
アライグマはぐすっと、フェネックのしっぽで鼻をすすったり涙を拭った。
「んー?...」
フェネックはアライさんの方を向いていたが、すぐにかばんの方へ向き直る。
「あーあ、良かったよかったー。かばんさん、生きた心地しなかったよー?」
安堵の笑みを浮かべたフェネックの向こうで、沖の方からザバッと顔を出す影があった。マイルカたちだ。
「かばーん!!」
涙目のマイルカが、泳ぎ寄ってくる。
「かばーん、無事でよかったぁ!」
涙目で駆け寄るドルカ。
「……本当に、心配しました」
ナルカもほっとした様子で言葉を継いだ。
さらに少し遅れて、大きな水しぶきとともにイッカクが姿を現す。
「無事か。……よかった」
少しほっとしたような声だった。
そこへ、ゆっくりと近づいてくる大きな影とともに、優しい声が静かに響いた。
「みんな、大変だったわね。……よく頑張ったわね」
穏やかに一同を見渡すシロナガスクジラは、かばんの方を見て、包み込むように微笑んだ。
「あなたが、かばんね。無事でよかった。……よしよし」
そう言って、シロナガスクジラはかばんをそっと優しく抱き寄せる。
「あっ……えっと……」
少し戸惑いながらも、かばんはその温かさに、ほっと肩の力を抜いた。
「えへへ、お母さんのハグ、あったかいでしょ?」
「……はい、なんだか、とっても...」
照れくさそうに笑うかばん。
「あっ……みなさん、心配かけてすみません……。でも、僕、助けてもらったんです」
「えっ?助けてもらった……?」
サーバルが目を丸くする。
「はい。気がついたら、海の中にある洞窟にいて……そこにいたフレンズさんが、僕をそこまで運んでくれたみたいで」
「えっ、誰が助けてくれたのー?」
「それが……えっと、洞窟の中、すごく暗くて……眩しい光もあって、でも暗くてあんまりよく顔が見えなくて。何のフレンズさんだったのか、実は分からなくて……」
「えーっ!?そうなの!?」
「それはたぶん命の恩人なのだ……!」
「んー...まあでも、無事だったなら良かったよー、かばんさん」
「はい……。あの、どこかでまた会えたらちゃんとお礼を言いたいです」
――――――――
「さて……名残惜しいけれど、私たちはそろそろ帰りましょうか」
シロナガスクジラの言葉に、イッカクが頷く。
「そうだな。あまり遠くまで離れると、他の子たちも心配するだろう」
「えー、もう行っちゃうのー?」
「またすぐ会えるよ、マルカ!かばんたちのこと、応援してるからね!」
「どうかお気をつけて。ゴコクエリアまでの道のり、大変だと思いますけれど」
「かばん、サーバル、みんな。……マルカのこと、よろしくね」
「はい、必ず」
「くれぐれも、マルカに変なことをするなよ...もし泣かせることがあったら...」
「...ごっほん」
シロナガスクジラに睨まれ、イッカクは慌てて言葉を引っ込めた。
「いや...何でもない。とにかく気をつけてな。マルカ」
「はーいっ」
そうして一同に見送られながら、ドルカ・ナルカ・イッカク・シロナガスクジラは、沖の方へと泳ぎ去っていった。
「行っちゃったねー」
「うん...」
――――――――
砂浜を歩きながら、一同はゆっくりと気持ちを落ち着けていた。
「さて、っと!ゴコクエリアまでは、まだ結構あるんだよね?」
「サーバル、ここもうゴコクエリアだよ?」
「えっ!?そうだったの!?」
「せっかくだし、この辺りをもう少し調べてみようか。何か手がかりがあるかもしれないね」
腕時計型のラッキービーストが、かばんの腕元でくるりと光る。
「そうですね。よし、探してみましょう」
砂浜を進んでいくと、少し高台になった岬の先に、古びた灯台が見えてくる。
「あっ!あそこ、なんか建物があるよ!」
「たかいのだ……!」
「灯台、かなー?」
「登ってみたーい!」
灯台の入り口をくぐり、一階部分に足を踏み入れる。埃をかぶった古い機材が、部屋の隅にひっそりと置かれていた。
「かばん、あれ……発電機みたいだね」
「発電機、ですか?」
機材に近づいてみると、電池を差し込めそうな口が付いている。
「うん。灯台の明かりを灯すために、使われていたものだよ。もしかしたら、これでバスの電池を充電できるかもしれないね?」
「えっ……!」
「えーっ!?ほんとに!?」
「やったねー、かばん!」
「さすがなのだ、かばんさん!」
「おー、さすがかばんさん」
「じゃあ、バスから電池を...」
「私もっていきたーい!」
「えっ...?じゃあ、サーバルちゃん...気を付けてね?」
「へーきへーき」
――――――――
少し経って、電池を抱えたサーバルが戻ってくる。
「大丈夫、前回のジャパリカフェにあったのと充電のやり方は同じだね」
「よいしょ...と」
かばんが電池を差し込むと、ブゥンという低い音とともに、機材のランプが一つ、また一つと灯っていった。
「あっ……充電、始まりました!」
「わぁー!すごい、すごいよかばんちゃん!」
「かばんさん、やったねー」
「これで、バスも自分で走れるのだ!」
「充電って、どれくらいかかるのー?」
「そうだね……2時間ほどはかかるよ」
「少し時間がかかりそうなので、その間にこの辺りを見てみませんか?」
「うんっ!探検だね!」
――――――――
灯台のすぐ外、岩場のあたり。
「あっ、なにこれ!」
岩の隙間を覗き込んだサーバルの視線の先で、小さなカニが横歩きでわちゃわちゃと動いていた。
「あ、カニさんですね」
「ねぇねぇ、触ってもいいかな?」
「触ってみたらいいんじゃないかなー?」
サーバルがそっと指を伸ばすと、カニは横歩きで岩の隙間へと逃げていってしまう。
「あっ、逃げちゃった!」
「サーバル、そぉっとやらないと逃げちゃうのだ」
「アライさんも一緒になって覗いてるじゃんかー」
「ふぇ、こ、これは観察なのだ!」
特に理由もないまま、一同はしばらく岩場のカニを眺め続けた。
――――――――
灯台の中の螺旋階段を、一同はのぼっていく。
「灯台は、昔のヒトが船の安全のために作った建物なんだよ。夜になると光を灯して、進む方向を知らせていたんだ」
「へえ……」
かばんは相槌を打ったきり、しばらく黙り込んだ。昔のヒトが、誰かのために夜通し光を灯し続けていた――そのことが、なぜか胸の奥に小さく残る。
「そうなんだー...」
よくわかっていない顔のサーバル。
頂上にたどり着くと、そこには古い望遠鏡が一つ、ぽつんと置かれていた。
「わっ、なにこれ!」
「のぞいてみようよー!」
我先にと望遠鏡に群がる一同。
「アライさんが先なのだーっ!」
「あ、そんなに走ると転ぶよー?アライさーん」
「私も見たい私も見たいー!」
「ぐぇふぇっ...」
案の定、アライグマが転んだ。
わちゃわちゃと押し合いへし合いする一同を見て、かばんは思わず苦笑いする。
「あはは……順番にしましょうか」
結局、一人ずつ交代で覗くことになった。まずはアライグマから。
「お、おおーっ……!なんか、遠くに陸地が見えるのだ!」
「ほんとー?んー、代わってー」
覗き込んだフェネックが目を細める。
「あ、ほんとだねぇ?結構遠いところまで見えるねー?」
「私も私もー!」
覗き込んだマイルカが、あっと声をあげた。
「あっ……あれって、もしかして……キョウシュウエリアじゃない……?」
「キョウシュウエリア?」
サーバルとかばんの声が重なる。
「うん!サーバルとかばんが元々暮らしてたところだよ。ここまで来ると、もうあんなに小さく見えるんだね」
かばんも望遠鏡を覗いてみると、小さく霞んで見える、それでも見覚えのある陸地の輪郭がそこにあった。
「……あれが、僕たちがいたキョウシュウ……」
呟くように言ったきり、かばんはしばらく言葉を継げなかった。
「わぁ……なんか、変な感じだね...あ、だれか見えるかもしれないね!おーいっ!」
「あはは...」
少し寂しそうな、でも前を向くような表情で、かばんは笑った。
一同はしばらく無言のまま、遠くに霞むキョウシュウを見つめていた。
――――――――
そのとき、灯台の上階の外――手すりのあるバルコニー部分に、ふと一羽の鳥が舞い降りた。
気配に気づいて振り返る一同。
「なになに?誰かいるよ!」
その鳥のフレンズは、少し驚いたように羽をすくめた。
「……あっ、えっと…初めまして…私は...アオツラ……カツオドリ……?」
たどたどしく、目を伏せがちに名乗る彼女に、かばんが応える。
「初めまして、僕はかばんっていいます」
「私はサーバル!みんなも自己紹介する?」
「アライさんなのだ!」
「フェネックだよー」
「マイルカだよー、よろしくねー!」
「……よ、よろしくお願いします……」
小さく頭を下げるアオツラカツオドリ。
「アオツラカツオドリちゃんは、ここで何してたのー?」
「……えっと……その……」
少し目を泳がせた彼女は、何かを言いかけて、ふと遠くの空を見上げると、表情をわずかに強張らせた。
「あっ……ごめんなさい、私……行かなくちゃ……」
「えっ?」
「また……いつか、ちゃんとお話しできたら……」
そう言うと、アオツラカツオドリは勢いよく羽ばたき、あっという間に空の彼方へと飛び去ってしまった。
「あっ……行っちゃった」
「……なんだったんだろう?」
かばんは、飛び去った方向をじっと見つめていた。
「アオツラカツオドリは、海に飛び込んで魚を捕まえるのが得意な海鳥なんだ。名前の通り、顔の青い部分が特徴なんだよ」
「へぇーそうなんだ!」
「そうなんですね」
「……うーん、あの子...急いでる感じだったねー。何か、事情がありそうだったよー」
フェネックの言葉に、一同はそれぞれの思いを胸に、もう一度、灯台からの景色を見渡した。
「かばん、電池が、そろそろ充電できてる頃だと思うよ」
「あ……そうでした!みんな、電池を取りに戻りましょう」
「あっ、そうだったね!いこいこ!」
一同は灯台の一階に戻り、かばんが充電の終わった電池を機材から取り外した。
「充電できたよ、できたよ」
「よかったのだ!」
「これで、ちゃんとバスも走れるね!」
かばんは電池を抱えてバスまで戻り、丁寧に取り付けた。
「これで、大丈夫だと思います」
「今日はもう遅いから日を改めていった方が先決だと思うよ」
「そうですね、今日はここでゆっくり休んで...明日、出発にしましょう!」
「わかったのだ!」
「はーいよっ!」
「うん!」
――――――――
夜遅く、波の音とカモメの鳴き声だけが残る砂浜で、かばんは一人、海を眺めていた。
「かばーんさ~ん?」
「うわぁ!?...ふ、フェネックさん...!?」
「いやー心配したよ~、こんな夜遅く、いなくなったから」
「すみません...」
うつむくかばんの隣に、フェネックがそっと腰を下ろした。
「アライさんみたいにどっかにいかれたらアライさんならどこにいるかまぁまぁ見当がつくけどさー?かばんさんはどこに行くかわからないしねー?」
「......」
「それにしても珍しいねー?かばんさん」
「えっ...?」
「かばんさんって、夜行性じゃないんでしょー?」
「そうみたいですね...ぼく、サーバルちゃんみたいに夜目はきかないので...」
「それなのにどうしてこんな時間まで起きてるのかなっておもってさー?」
「......」
「......」
かばんは、少しだけ迷ってから口を開いた。
「...ぼく、悩んでたんです」
「んー?」
「サーバルちゃんやみんなの邪魔しちゃいけないって...僕の都合で勝手に連れてきてよかったのかなって...そう思うんです...変な話ですよね」
「...かばんさーん?」
「...はいっ」
「私たちはかばんさんの都合で来たわけじゃないよー?」
「えっ?」
「私はアライさんがかばんさんのところに行きたいって言ったからついてきたし。サーバルだって、かばんさんのところについていこうと思ってきたわけだし、みんなかばんさんの都合で来たんじゃなくてさ、自分の意思で来たんじゃないかなー?」
「...そうなんですかね...」
「まー私は、面白そうだから来ただけなんだけどね」
「ははは...」
かばんは、苦笑いを浮かべた。
「私は、そろそろアライさんのところに戻るよー」
「はい、おやすみなさい」
「はいよー」
フェネックが去っていったあと、かばんは一人、小さく呟いた。
「...意思かぁ」
海を眺めながら、かばんはふと、その言葉を口ずさんでいた。
――――――――
翌朝。日が昇り、鳥のさえずりが聞こえる。
かばんはジャパリバスの座席から目を覚まし、ゆっくりと起き上がると、目をこすりながらバスを降りた。
「あ、かばんちゃん!おはよー!」
「おはようございます」
「よーし、今日も元気に出発なのだ!」
一同はバスに乗り込み、ゴコクエリアの奥へと進んでいく。
――――――――
バスは、いつしか陸地に上がり、土の道を進んでいた。
「あれ、なんか木がいっぱい生えてきたね」
見渡す限り、まっすぐに伸びた緑の竹林が広がっている。
「わぁ……ここ、なんだか変わったところですね」
「ほんとだ!草原とも森ともちがう感じ!」
そのとき、ガクンッという衝撃とともに、バスが大きく傾いた。
「ふぇ、ふぇーっ!?」
「んー……どうやら、溝にはまっちゃったみたいだねー」
「えっ……」
バスの下を覗き込んだかばんが呟く。
「本当だ……車輪が、溝に……」
「よし、みんなで押せば何とかなるよ!」
「そうですね。じゃあ、一旦バスを降りましょうか」
一同はバスから降り、後ろに回った。
「せーの、で押すよー!準備はいい?」
その時、近くの草むらから「ガサ、ガサ……」という物音が聞こえた。
「……?」
「……?」
草をかき分けて、ひょっこりと何かが姿を現す。
「うわぁっ!?た、たべ……」
「はじめまして。僕は、ラッキービーストだよ。よろしくね」
「えっ...?」
「ボスっ!?」
サーバルの声が、竹林に響いた。
――――――――
夜明け前の、ゴコクエリアにある森の中。
草のざわめきと、遠くで泣くフレンズの声が、静寂の中に足音とともに響いていく。夜も明けていないせいか、空気が冷たい。
そんな中、必死に息を切らして走るフレンズがいて、泥で顔を汚し、足元を震わせながらも、なんとか逃げ続けていた。
うしろにはセルリアンがいて、ドス……ドス……という重い足音がじりじりと距離を詰めてくる。
「はぁっ...はぁっ...!」
小さな石に足を取られ、ズシャッと音を立てて地面に転がったのは、アードウルフだった。
セルリアンが、そんな彼女ににじり寄る。恐怖のあまり、アードウルフはぎゅっと目を閉じ、震えることしかできない。
「こっ、こないで…っ!」
けれど、いつまで経ってもセルリアンが襲いかかってくることはなかった。
おそるおそる目を開けたアードウルフが見たのは――パッカーンと砕け散る、セルリアンの姿だった。
しばらくの沈黙。森の中には、フクロウの鳴き声だけが響いている。
少し離れた場所に一人のフレンズが立っていて、なぜかその服はうっすらと汚れ、呼吸も荒い。
ゆっくりと歩み寄ってくるその子に、アードウルフはビクッと肩を震わせながらも、おそるおそる顔をあげた。
「…………こわかったですよね。――ごめんなさいっ」
少し斜めになっていた帽子を直しながら、その子――ドールは、心配そうに、けれど優しく謝った。
そして、すぐに明るい調子に切り替える。
「でも、もう大丈夫ですっ!探検隊が来ましたからっ!」
にっこりと笑うドールに、アードウルフは思わず見入ってしまう。
数秒後、近づいてくる足音とともに、サーベルを左手に持ったサーベルタイガーが姿を現した。無言であたりを見回すと、落ち着いた声で、少し眉を寄せながら尋ねる。
「......ふたりとも、けがはありませんか?」
「私は大丈夫ですっ!隊長ですからっ!」
にっこりと明るく答えたドールは、それからアードウルフの方に向き直った。
「そういえば、あなたは大丈夫ですか?」
首をかしげるドールに、アードウルフは少し戸惑いながらも、小さく頷いた。
「...はい。あの...あ、ありがとう、ございます……」
ドールが、そっと手を差し伸べる。
「いえ...たんけんたいのしごとですからっ!」
その手を取って、アードウルフはゆっくりと立ち上がった。
風の音と、フクロウの鳴き声だけが、静かに森に残っていた。