エンタメ小説研究交流会

創作資料紹介 『世界の粉物とスパイス料理 荻野恭子のシルクロード・食のぐるり旅』のご紹介

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『世界の粉物とスパイス料理 荻野恭子のシルクロード・食のぐるり旅』

朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:世界の粉物とスパイス料理
料理家・荻野恭子が、50年にわたってシルクロードを旅しながら出会った、世界各地の粉もの料理とスパイス料理を一冊にまとめた大作レシピ本。 パン、餃子、ナン、餅、...
朝日新聞出版 最新刊行物

荻野 恭子 著
朝日新聞出版

【総評】

 陸のシルクロードで、中国、モンゴルから、中央アジア、北インド、イラン、コーカサス地方、ロシア、ウクライナ、トルコ経て、ヨーロッパまでの粉物料理(パン<特にナン>、肉まん、パイ、餃子、麺類)と、ヨーロッパから海のシルクロードをたどって、北アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア)、中近東(エジプト、トルコ)、南インド、東南アジア(マレーシア)、中国のスパイス料理を取り上げた、「レシピ付き料理エッセイ」。ちょっと高いとは思ったが、関心のある地域が網羅されていて、テーマも好みで、料理のうんちくも一通り書かれていて、買った甲斐があった。
 

良かった点

 ・オールカラーであること。この種の本で写真が白黒だと魅力が半減する。
 
 ・写真も、料理が主体ではあるが、シルクロードの風景も少なくない。
 
 ・レシピは、レストラン向けではなく、基本的に一般家庭のもの。外食も、高級レストランというより、街食堂や屋台。宮廷料理(トルコ料理には一部、宮廷料理の流れをくむものがあったが)よりも、一般庶民の日常食を知ることに向く。
 
 ・「シルクロードの粉物と道具」とのコラムで、パン類を焼いたり蒸したりする道具が取り上げられている。特に、中央アジア、イラン、北インドで使われているかまど「タンドール」の分かりやすい写真があったのがありがたい。
 

 ・カザフスタン、ウズベキスタン、ジョージア、ロシア、ウクライナなど「旧ソ連地域」の比率が比較的高いこと。
 
 ・中国・西安名物ヤンロンパオモウ(細かくちぎったパンを羊肉スープで軽く煮るか、スープをかけた料理。パン雑炊やパン(ダシ)茶漬けというところか?)がレシピ付きで取り上げられたこと。

残念な点

 ・製本の関係か、片手で持って開きづらい。
 
 ・レシピが簡単すぎる。本書をジャンル分けすれば「レシピ付き料理エッセイ」のため、エッセイが主、レシピが従。調理手順の詳細な連続写真はない。書名にあるように「粉物」、パン<ナンや中華蒸しパン>、餃子、麺類が主なのに、トルコの極小餃子「マントォ」をのぞき、生地の成形手順(具の包み方を含む)の連続写真がない。基本的なものや特徴的なものは、成形手順の詳述の上で、連続写真を載せておいてほしかった。例えば、中央アジアの「汁なしグラメン(うどん)」の成型方法は、「1本の端を左手に持ち、右手で引っ張りながらのばしていく。両手首に交差させながらかけていき、その状態で両手を上下させまな板などに打ちつけながら細くのばす」とあるだけで、どうやるのかのイメージが付かない。そばやうどんを手作りする人はいるが、それは薄くのばした生地を包丁で切る。麺を手作りした経験のある人でも、これで分かるのか?
 
 ・モロッコやチュニジアのページ数が少ないのは残念。もう少しページ数を割いてほしかった。

 ・字体が違うとはいえ中国の料理は漢字だからまだ良いが、現地で探すことを考えると、料理名には現地語のスペルを併記して欲しかった。

ドラコン
作成: 2025/10/03 (金) 17:20:51
最終更新: 2025/10/03 (金) 23:39:08
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